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はちどりのtaominicocoのレビュー・感想・評価

はちどり(2018年製作の映画)
5.0
コロナ禍の影響で公開が延期になっていた『はちどり』を、やっと観れました。
ずっと観たくて、観たすぎて、という私の期待を全く裏切らず、というよりも遥か上をいく素晴らしさでした。

今年観た映像作品の中で、ダントツの一位です。

韓国国内の映画祭やベルリンでも賞を獲っていますが、『はちどり』がキム・ボラ監督の処女作というから、驚きしかありません。なんという完成度。

自分は幸せなのか、自分は何がしたいのか、自分は何者なのか、自分は自分が嫌いで仕方がない。そんな思春期特有の少女が抱える憂鬱を、丁寧に美しく描いています。

作品は、監督の経験が元になっているのだそう。

昨日まで親友だと思っていた子に裏切られたり、彼氏がいるというだけでクラスの子からハブられたり、「先輩好きです」と告白してきた後輩女子が素っ気なくなったと思ったら「先輩を好きだったのは前の学期の話です」と軽くあしらわれたり。

大なり少なり、中学時代ってこういうことがあるよなぁ。自分もこんな日常を過ごしていたんだろうか……? と妙な感慨に浸りました。それにしても、中学女子、面倒くさすぎる。

家族との不和、友人との関係、学歴至上主義の社会に主人公は傷つき、右往左往しますが、そんな彼女を救うのは、塾の先生との出会いです、この先生の言葉が、いちいち、大人の私の心にも刺さります。

「自分が嫌いだと思ったら、心にどんな気持ちがあるのか覗いてみて」

こんなに歳を重ねても、未だに自分が嫌で仕方がない瞬間があります。「そういう時どうしたいい?」なんて、もう、誰にも聞けない。

映画にまた、心の置きどころを教えてもらえた。そんな、日曜の夜でした。
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