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はちどりのmのレビュー・感想・評価

はちどり(2018年製作の映画)
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嫌でも理解できてしまう心情に終始涙が止まらなかった。
不安、孤独、怒り、焦燥、、、この時期は本当にいくつもの感情を抱えてギリギリのところを生きている。
その不安定さと危うさが、淡々と流れる日々の中に強烈に描かれていて、特に前半は観ているのがしんどかった。

不穏な空気が常に漂う家にいたら幼い心は確実に壊れていく。ウニちゃんが非行に走るのもすごくよくわかる。
そんな中でも、心を開いてみてもいいかなと思える人との出会いによって見える世界がガラッと変わるのだから出会いって素敵だな。先生の言葉はきっと、死ぬまでウニちゃんの強い味方。
"黙らずに立ち向かう" 難しいけど誰も守ってくれないのだから自分を守る為には必要なことだね、、

どうしても女性の生きにくさについてフォーカスされがちだけど、父親と兄が声をあげて泣くシーンは男性の弱さや脆さにも触れていて、家父長制や、長男に期待が一点集中するという構造の中に苦悩と葛藤、誰にも頼れない寂しさを抱えているのだなと悲しくなった。

誰もが被害者にも加害者にもなるこの世界。少しだけでも他人に意識を向けることができたなら、少しだけでもわからなかった心に触れることができたなら、そんな残酷な世界も美しく思える瞬間があるのかもしれない。
すごくすごく優しい映画だった。
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