ベビーパウダー山崎

愛欲のセラピーのベビーパウダー山崎のレビュー・感想・評価

愛欲のセラピー(2019年製作の映画)
2.5
多用されるフラッシュバック、時間軸もバラバラ、難しい映画にする野心はあるが、イメージの羅列でしか語られない表現にこちらも黙って付き合う義理もなく、頭でっかちで作り手の幼さばかりが目立ってしまう凡作。精神科医と映画撮影、どちらも作り物で嘘をつく仕事とも言えて、その似た状況を重ねてサスペンス風のドラマにしたいのも分かるが、映画がごちゃごちゃと四方八方に目移りしているので、せっかくの設定も活かしきれていないし脆くて危険なキャクターに迫りきれていない。その場限りの感情に支配されているのに、さも知的であるような振る舞いをしていてみな底なしのバカに見えるのも大問題。
合わせ鏡のようなキャラクターを配置して心理で揺さぶりをかける、ベルイマンをやりながらベルイマンではない着地を試みているような気はした(全然上手くいっていないけど)。どこがどうというわけではないが、なんとなくアサイヤス映画の匂いも。
人生そのものがフィクションだと嘯きながらも自分が産み落とした子どもの眼差しはリアル、前作『ヴィクトリア』と同じ「自由と責任」に折り合いをつける映画。ジュスティーヌ・トリエ、期待されているらしいがこの先も熱心に追いかけていきたいほどの作家ではなかった。