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天国にちがいないのQIのレビュー・感想・評価

天国にちがいない(2019年製作の映画)
4.0
“右脳から左脳へ”

予告編を見て「好きな映画に違いない!」と思い鑑賞に望みましたが…

とても好きな映画でした✌️

監督、脚本、主演はエリア・スレイマン。

スレイマン監督は本人役としてキリスト生誕の地である故郷のナザレからパリ、ニューヨークを旅しながら様々な光景を目にします。

その光景はとてもシュールでシニカル。

彼はほとんど言葉を発することがありませんが、それを眺めるスレイマン監督の表情がたまらなくツボ!

次々と映し出されるその光景は右脳を心地よく刺激し続けます。

多くの人に同時に映像を見せるためにリュミエール兄弟が発明したキネマトグラフが映画の始まり。

彼らは世界中から様々な映像を集めて多くの人たちの好奇心を刺激し楽しませましたが、この作品もそんな感じではないかと。

ところが映画の中盤から“パレスチナ”という言葉が頻繁に語られるようになると、それまで右脳で感じていた心地よさにどこか引っ掛かりを感じ始め、思考は左脳に移っていきます。

「はたしてパレスチナ人である自分の居場所はどこなのか?世界とパレスチナはどう違うのか?」という監督の疑問を、観客にも自分の居場所のこととして考えさせることに…

そして旅を終えナザレに戻った彼は、確実に変化している故郷の様子を目にし、戸惑いを感じながらもどこか安堵の表情を浮かべます。

いつもの場所でのいつもの日常。

結局はそれが自分の居場所で「天国にちがいない」のでしょう。

人間の悲しみや愚かさを喜劇として描いてきたチャップリン。

スレイマン監督が現代のチャップリンと称されるのも納得です。

p.s.
ニューヨークでのあるシーン
あれはスコセッシ監督へのリスペクトだったのか?アイロニーだったのか?
ん〜、わからない🤔
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