No.1738 2019年パレスチナ🇵🇸/カナダ🇨🇦/フランス🇫🇷その他合作映画となっている。
監督はエリア・ストレイマン。パレスチナの監督さんだ。「D.I」でカンヌ国際映画祭の審査員賞している。
コメディである。
でも大声を出して笑うような映画ではない。頬が緩むような可笑しさだ。
物語はあるような、無いような。しかし面白いシーン、エピソード満載で退屈しない。
エリア・ストレイマン監督自身が新作映画の企画の売り込みに故郷のナザレから、パリ、ニューヨークを旅して、再びナザレに戻ってくるまでの話。
映画の導入部はキリストの生誕地ナザレらしく、何やら荘厳なキリスト教(?)の儀式で始まる。ところがこの儀式で、一つ皮肉って笑いをとって、映画は始まる。初めてパレスチナ映画を観たものにとっては、驚きの導入部。
この映画の主役の監督は、どことなくチャップリンに似ている。と言うかチャップリンを演じたロバート・ダウニー・Jr.に似ている。
演技そのもの、所作も相当チャップリンの影響を受けている気がする。
この監督がナザレでも、パリーでも、ニューヨークでも、何も語らず、ただ街を、そこで暮らす人々をじっと見ている。見ているというか、時に「俯瞰」しているようにも思える。
監督が見ているパリ、ニューヨークは驚くように美しい。
特に、ニューヨークのセントラルパークだろうか、こんな綺麗なニューヨークは初めて観たと言えるぐらいに美しい。
この美しい景色の中で、人々が滑稽に生きている。それを彼は見ている。
そして時々、美しいパリの街並みに戦車が現れたり、ニューヨークのコンビ二周りは誰もライフルを持って現れたりして、ドキッとさせられる。
ナザレの家の前で突然、「隣人さん」と声をかける猟師のジーさんが登場する。なんだろうと思っていたら、助けた「ベビ」の話を始める。これが実に面白い。ここだけは笑い転げた。
全編、ユーモアと美しい映像とアイロニーに満ちた面白い映画。紛争が続くパレスチナの監督さんだけに何を思いながらこの映画撮ってるのだろうと考えざるを得ない。
答えは題名の
「It must be Heaven」にあるのかも知れない。
この映画は観る価値があります。