建野友保

燃ゆる女の肖像の建野友保のレビュー・感想・評価

燃ゆる女の肖像(2019年製作の映画)
4.2
たった5日間の燃えるような恋。画家マリアンヌにとっては一つの思い出でも、間もなく見知らぬ男のもとに嫁いでいく貴族の娘エロイーズにとっては一生でただ一つの恋。その対比がとても切なく感じました。前半のヒリヒリするような緊迫感と、その後の堰を切ったような愛の交歓、その対比もまた見事でした。
全般に感じたことですが、音の使い方がとてもセンシティブで、ビバルディの「四季」の中でも最も感情が昂る曲を満を持して使うところなどは実に巧妙でした。この「四季」、著名なイ・ムジチ合奏団かなと思いましたが、抑揚がカラヤン並に強めに感じられたので、指揮・演奏者は違うのかもしれません。ただ、押しては返す波のように涙が堪えきれなかったエロイーズの気持ちとリンクしているように感じられたので、彼女(アデル・エネル)の演技が音楽に抑揚をつけさせたのかもしれません。
個人的にはマリアンヌを演じたノエミ・メルランの目力と、只者ならぬ監督(セリーヌ・シアマ)の力量が強く印象に残りました。
追記ですが、メイドのソフィはこの時代の女性の、抗いがたい運命を悟った人物として登場しており、時代状況を描く一助ともなっていて、物語に奥行きをもたらしていますね。このへんも実に巧いと感じました。
僕が女の子だったら、そして短期集中型の燃えるような恋を経験していたなら、星は5点近いかもしれません。
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