KeiRalph

燃ゆる女の肖像のKeiRalphのレビュー・感想・評価

燃ゆる女の肖像(2019年製作の映画)
4.3
結婚を控える上流階級の娘と、その娘の肖像画を描きに来た女性画家の出会いから深まる愛、そして絵を描き上げる事で必ず訪れる別れの話…と言えばそれまでですが、それだけでは終わらない深さと重さが静かに、それでいて激しく続いていきます。

劇中では殆ど劇伴が無く、それに変わるのはシーン毎の様々な効果音。パイプを吸う音やキャンバスに筆を落とす音、そして焚き火の爆ぜる音…それぞれが二人の実在感と距離感の対比を思わせます。

テーマとしては、女性としてのあるべき姿とは何か…という所でしょうか。異性との結婚という制度によって、偶然に出会っただけの関係性から、絵が完成する事で全てが終わる事を分かりつつ、止められない衝動。それと相反して同時進行する侍女の堕胎…その場に居合わせる無垢な表情の赤ん坊(あれは誰の子なのだろう…)。そんなカオスな環境ながら、絵を完成させるまでの僅かな5日間は見る我々も永遠に感じました。

しかしながら、やはり訪れるラストシーン。燃ゆる女としての幸福はどこにあるのか。
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