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燃ゆる女の肖像の旅するランナーのレビュー・感想・評価

燃ゆる女の肖像(2019年製作の映画)
4.6
【稲妻のような一撃】

茨木のり子の詩「歳月」は次のように締めくくられています。

けれど
歳月だけではないでしょう
たった一日っきりの
稲妻のような真実を
抱きしめて生き抜いている人もいますもの

30年前に世を去った夫への妻からのラブレターのような詩です。
この映画を観ているうちに、ふっとこの一節が僕の頭に浮かんできました。
彼女たちの燃えるような愛情には長い年月は必要なく、稲妻のように衝撃的な忘れられない感情に違いない。

アデル・エネルとノエミ・メルラン。
この美しい二人を、しっとりとじっとりと、情熱的に冷静に、繊細に大胆に、瑞々しく艶っぽく、現実的に不可思議に、振り幅広く描写します。
心を揺さぶり脳裏に焼き付いて離れないシーンが多々あります。
忘れられない一作です。
僕は、たった2時間きりの稲妻のようなこの映画を抱きしめて生き抜くことでしょう。