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燃ゆる女の肖像のsuzyのネタバレレビュー・内容・結末

燃ゆる女の肖像(2019年製作の映画)
5.0

このレビューはネタバレを含みます

どの場面を切り取っても絵画のように美しくて、画家のマリアンヌと貴婦人の娘エロイーズの物語を伝えるのにピッタリの描写だと感じた。セリフや音楽は最低限、彼女たちの表情から感じ取れる心情によって話の展開が進んでいくのもとてもよかった。

女性画家は土俵にすら立てないような時代に、女性が女性を描くというのがとても興味深かった。エロイーズが男性の妻、いわば所有物になるための肖像画を、マリアンヌは描く。エロイーズが結婚することを後押しするような行動を取らなければいけない状況で、2人が恋に落ちてしまうのを観るのがとても苦しかった。

中絶のシーンも印象的だった。小さい赤ちゃんと子供がいる部屋で、普通に中絶が行われるのに驚いた。ソフィーの痛みに苦しむ表情と、経験者であるマリアンヌが顔を背けるのを観て、どれだけ中絶が女性にとって身体・精神を傷つけるものであるかを感じた。男性はこの痛みや苦しみを感じることは無く、女性をモノのように扱い、その代償は女性が強制的に受けなければならないことに対する製作者側の批判であると思った。

男性登場人物がほとんど出てこない点、そしてマリアンヌとエロイーズの別れにおいてのみ、それを引き裂くような形で男性が登場するのも、おそらく彼女たちを邪魔するものが男性優位社会、自由恋愛すらもすることが出来ない社会構造であるということを伝えるためのものではないかと思った。

そしてなんといってもラストシーン。28ページを画家に見せることで、エロイーズは結婚に対する抵抗と未だにマリアンヌを想う気持ちを表現したのかなと思う。とにかく切ない。そしてヴィヴァルディの夏を聴きながら涙し、笑顔を見せるエロイーズ。マリアンヌの方を見ることは決して無く、それはオルフェウスの物語からも分かるように2人の思い出を永遠にするもので、社会への抵抗でもある。

女性2人の愛の物語でもあり、男性優位社会への抵抗の物語でもある作品。まだまだ後ろに隠されたメッセージを拾いきれてないと思うのでまた見直して色々考えたいと思った。とにかく素晴らしかった、圧巻!
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