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燃ゆる女の肖像のガクのレビュー・感想・評価

燃ゆる女の肖像(2019年製作の映画)
3.7
美しい物を集中して観るために不要なものは排除された空間に、『裸足の季節』の五姉妹の部屋の中の空間のような、とにかく汚いものは入れて欲しくないような感覚を味わった。

ラストの呼吸の動きと連動するカメラブレの一致が変態的だった。

こちらから頭を下げて乗船させてもらうくらいのわけのわからない場所を指定する主人公。という設定が、荷を海に落としてしまい誰も助けてくれないシーンや、着いてから岸のすぐそこまでしか荷物を運んでくれない船員の態度でわかる。手際の良いスタート。それのみにあらず、映像表現を追求したシーンの数々に映画愛を感じて嬉しくなった。

また、余談ではあるけど、映画の中でオルフェはなぜ振り返ったのか話しているシーンがあった。自分的にオルフェは本当に妻を地上へ救い出せるのか半信半疑で、もし振り返らずに地上まで出れば妻は救えるという事が嘘でしたとなれば二度と妻を見れないが、今振り返れば確実に妻を見れるという究極の2択だったのだと思う。そんな風に思ってくれる旦那に対して、その奥さんは安心して奈落に落ちて行ったんだと思う。ちょうど今日小説『アジアンタムブルー』を読んだので、そんな事を考えた今日この頃でした。
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