がんびーの

名もなき生涯のがんびーののレビュー・感想・評価

名もなき生涯(2019年製作の映画)
4.2
誰にも名前を覚えられてないような小さな行動が、世界を少し良くしている。
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第2次世界大戦下のオーストリア。山と谷に囲まれた美しい村で、妻フランチスカと3人の娘と暮らしていたフランツは、激化する戦争に従事するように命令を受けるが、ヒトラーへの忠誠を拒んだことで収監される。裁判を待つフランツをフランチスカは手紙で励ますが、彼女自身もまた、裏切り者の妻として孤立する生活を強いられていくことになり…。
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信念を貫くことがどれほど美しいか、また他人の強い信念をねじ曲げることがどれだけ難しいかを教えてくれる力強い物語。宗教的なニュアンスが多く含まれているが、たとえ神を信じていなくても、自分の信念を守り通す人は強く美しい。それが大きな代償を払おうとも。周りの人が耳元で囁く「お前の行動は何にも影響しないんだぞ、誰も知ることはないんだ」。それでもフランツは言葉を曲げなかった。彼は嫌だから戦争に参加しないのではなく、戦争に参加しないことこそが自分の道だと知っているから参加しないのだ。それは困っている人がいたら助けてあげたり、倒れている傘があったら起こしてあげるのと同じくらい当たり前なこと。
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テレンス・マリック監督の映画はいつも物議を醸す。本作品もレビューを見る限り賛否あるもよう。私は素晴らしく感動したのが正直な感想。広大な自然をバックに哲学めいた綺麗な言葉を並べてだけなのではと言う意見もあるが、私はそれで十分胸を打たれた。残酷な話を美化したストーリーともいえるが…。
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カメラワークは特に見応えあり。普段見る映画よりも比較的低い視点からのアングルと、手持ちカメラで撮影したと思われる揺れる画面は、独特な臨場感を醸し出す。三時間と言う長い尺だったが物語にのめりこめたので一瞬だった。
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ぜひぜひぜひ
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