木野エルゴ

名もなき生涯の木野エルゴのレビュー・感想・評価

名もなき生涯(2019年製作の映画)
2.7
家族の事を思えば自分の意思を曲げてでも生き抜くべきではないのか、という意見もある。しかしそれを多くの人が選んでしまったから、戦争は多数の破壊と犠牲者を出し、どちらかが負けるまで続いた。

「ただ、普通の生活がしたい」それを望んだ彼を責められる道理などどこにあるだろうか。「国家が敵だと認定した人々を命令に従って殺せ」という理不尽な要求をした者たちを、信念を貫こうとした人やその家族たちに苦難を与え続けた者たちを咎めずに、なぜ平和に生きようとした人たちを責められる。

人には自由意志がありその責任を負う義務があるのに、組織や権力の笠の下では皆それを放棄したがる。権力が間違っていると分かっていても、考えることを自分の力で生きていくことを捨てる。最期まで自分の意思で生き抜いた人たちのおかげで、世界はマシな姿を保っている。

という内容の映画だったように思う。

テレンス・マリックの映画はとにかくキアロスクーロが際立ってて美しい。どのカットもまるでフェルメールやレンブラントの絵画みたいな質感がある。出来れば戦争が起きなかった設定で家族の風景をずっと見ていたかったなと思った。
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