朝田

バクラウ 地図から消された村の朝田のレビュー・感想・評価

3.9
めちゃくちゃ楽しかった。正直今年のスローバイオレンス・ムービーとしては「ブルータル・ジャスティス」の方にショットのカッコ良さという意味で軍配が上がる。しかし、これも緊張感の持続という意味では肩を並べていると思う。最近だと「コクソン」みたいな村を舞台にしたジャンル・ホラーを視点を切り替えて村人と侵入者のストーリーを濃密に描くことで反転させている。普通だったら省略するような泥臭く人間の行動を一々じっくりと見せる事で全体に生々しい臨場感が埋まれてる。アリアスターの「ミッドサマー」なんかもジャンル映画の解体に挑んだ作品な訳だけど、こちらの方がより作家性を誇示するだけに留まらず、「通常だったら怖がらせる側が、主人公として存在する」という新たなジャンル映画の形を提示していると感じた。鼻につく感じが無い。ラストのB級感丸出しなウドキアのセリフにそれは顕著に現れている。しっかりと殺した後の死体処理の様子などを見せるため、低予算であることもむしろリアリズムを生んでいる。そういう意味で白石監督の「オカルト」を思い出したり。だからメチャクチャしているようで、実は結構考えられた作品だと思う。表情の切り返しから銃殺を行うまでのシーンを一切情緒無く見せるドライな演出が素晴らしい。マカロニウエスタンとカーペンター作品が混ざったようなジャンル映画愛に満ちた怪作にして快作。
朝田

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