Chico

バクラウ 地図から消された村のChicoのレビュー・感想・評価

4.3
予告からホラー映画なのかと思ってたけどいい意味で大きく裏切られました。

近未来のブラジル、ペルナンブーコ州西部の村バクラウ。村の長老カルメリータが亡くなり、長らく故郷を離れていたテレサは葬儀のために村に戻る。村人達はカルメリータの死を悼み、彼女を丁重に弔う。
携帯などは普及するも食料や水に貧しい村だが、医者もいれば犯罪者や娼婦も、村人のは皆同胞として支え合って生活していた。ある日陽気な音楽を鳴らしながらトニー市長候補を乗せた街宣カーが人里離れたバクラウにやってくる。村人達は水源を掌握するこの悪党政治家に嫌悪を抱いていた。
そしてその後まもなく地図からバクラウの村が消え、村から少し離れた農場の一家が皆殺しになるという恐ろしくも不可解な事件が起こる。
一体誰が?なんのために?

なんとも奇妙。村は架空であり舞台は近未来。完全にフィクションだけど恐ろしい寓話だと片づけられない、この世界と地続きにあるリアルが存在する。ネタばれせずに語るのが難しいですが、ジャンルの枠を超え、物語構成の型を外し語られる、不気味だけど遊び心もあるエンターテイメント作品。社会学的、歴史的観点からの考察が読みたいところ。

私がこの繰り広げられる惨劇の後に得た感情はカタルシスと同時に不安でした。なんとなくこれが起こってもおかしくないという不安。最終的に強いのは共同体の力。日本がかれこれ数十年間で失ったこの価値観を見直す時が来ている。SDGsとか言ってる大企業に耳を傾けるのではなく手の届く範囲の人々と繋がろう。そこから守れるもののほうが遥かに大きく重要かもしれない。

本作は2019年のカンヌで”パラサイト”と並んでパルムドールを競い惜しくも賞を逃したという作品です。実力伯仲の作品を比べても意味ないですが、パラサイトより好みの分かれる映画です。インパクトにおいては引けを取っていないと思います。

2021.11.12
2回目鑑賞
1回目より意味不明な箇所があるけど1回目より面白い。
Chico

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