まおう

レ・ミゼラブルのまおうのレビュー・感想・評価

レ・ミゼラブル(2019年製作の映画)
4.0
ようこそ修羅の国パリへ。
カンヌ国際映画祭審査員賞受賞、アカデミー賞外国語映画部門にもノミネートされた衝撃作。
「レ・ミゼラブル」が書かれ、作品の舞台にもなったパリ郊外モンフェルメイユを舞台に現代のパリが抱える無情な現実が描かれる。

ワールドカップ優勝の熱気が冷めやらぬ2018年夏、様々な人種が入り乱れるパリ郊外モンフェルメイユに配属となった警官ステファンは初日からサーカスのライオンの盗難事件に端を発したロマ系住民とアフリカ系住民の小競り合いに巻き込まれ犯人探しを始めるが、事件は恐るべき方向へと転がっていき取り返しのつかない悲劇が起こる…

これが決して笑うことの出来ない修羅の国パリの現実である。
郊外に乱立する掃き溜めのような低所得者向けアパートに住む人々は職にあぶれ違法な商売に手を染め、ギャングまがいのグループがのさばり、そのような環境に適応するため警察は差別心を隠しもせず弱きを挫き強きにへつらう。
絶望的な状況に子どもたちが助けを求めても、大人達は嘘でごまかし全てを無かったことにする。
地獄である。
だがこれが日本のガイドブックやテレビ番組ではお洒落で可愛くてワインとマカロンとクロワッサンの香りが漂い美男美女が愛を囁きあう夢の国のように描かれている修羅の国パリの現実であり、日本を含め世界のどこにでも起きている地獄なのだ。
不幸な環境を腐するだけで何もせず生きる大人がまたさらなる不幸な環境を作り出しそこで子供たちが生きる事になるのだ。
観客に投げかけられる衝撃的なラストとヴィクトルユーゴーの言葉がいつまでも心の中に響く。
(だからといって「悪いのはやった人じゃない…そうさせる環境を作った人がいけないのだ」とか言って私を投げ飛ばしてスマホ奪ったヤツやバイクで私を引きずってカバン奪ったヤツやスリに抵抗したら頭殴ってきたあのガキや無賃乗車しようと改札前で私に張りついて尻を蹴ってきたあのガキのことはゆるさねーけどな!)(こうして憎しみはさらに憎しみを生むのだった…)
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