Filmarks様からご招待いただき、試写会にて鑑賞。
2日以内にレビューを上げるよう言われていましたが、気付けば3日が過ぎていました…ごめんなさい。
当日はラジ・リ監督と細田守監督、市長役のスティーブ・ティアンチューが登壇。
新鋭ラジ・リ監督の長編デビュー作となった本作は、多くの低所得者を抱え、治安の悪さが社会問題となっているパリ郊外モンフェルメイユという街を舞台に、華やかなフランスが抱える闇をリアルに描写。
実は監督自身もこのモンフェルメイユで育ち、現在もこの地に暮らす。
『僕自身が証言者としてこの作品を作った。』
その言葉の通り、私達は新たに赴任してきた警官ステファヌの視点を通じて、彼らの境遇、怒りを生々しく体感できる構成になっている。
同地はヴィクトル・ユゴーの『レ・ミゼラブル』の舞台になったことでも有名な地域。
“レ・ミゼラブル”とは哀れな人々、貧しい人々という意味である。
「移民社会化」が早い段階から進んできたフランス。
移民統合を唱えながらも、実際は人種による壁は厚く、差別や貧困などさまざまな理由からフランスに「同化」できない移民が多くいるのが実情。
『平等』という本音と建前が入り混じった傲慢な論理を掲げながらも、フランス政府は郊外に住むマイノリティへ向き合おうとしていないのが現実なのである。
それどころか、2005年の暴動やパリの襲撃事件以来、イスラム教徒や移民に対する排外主義が強まってすらいる。
警察に日常的に監視され、繰り返し職務質問をされる郊外の若者達。
革命とテロリズムの違いは何だろう。
この作品を見ていると、もはや抵抗し訴える術は暴力しかないようにも思えてくる。
狂信的な教えに感化されやすい状況しか、そこにはないように見える。
大人たちの腹黒さ。
イッサもまたこうやって大人になっていくのかなあ。
格差や貧困を克服しない限り、彼らの苦しみも、移民への軽視も、脅威とみなす風潮もなくならないのかもしれない。
フランスのマクロン大統領も本作を鑑賞し、反応を示していた。
このどうしようもない負の連鎖を断ち切るために『映画』を選択したラジ・リ監督を心から尊敬します。
監督が言うように、この作品を通じて、映画が扱っているテーマの議論が一歩前進することを強く願います。
ラストシーンの意味深さ。
「友よよく覚えておけ、悪い草も悪い人間もない、育てる者が悪いだけだ」
ヴィクトル・ユゴーの言葉が、深く心に響く。