因果応報。ヴィクトル・ユゴーの小説やミュージカルの舞台となったパリ郊外の犯罪多発地区において、一つの小さな事件をきっかけに大問題に発展し悲劇が連鎖する。パリの華やかなイメージとは裏腹に荒廃した建物や横暴な警官が牛耳る日常が辛い。
これは舞台こそフランス・パリ郊外の話だとしても他人事では片付けられない話だと思いました。
パリを題材にしたオシャレな映画も数多く、私も『ミッドナイトインパリ』などパリの街並みを魅せる作品は大好きです。だけど、観光名所として知られるパリではなく、その郊外モンフェルメイユは犯罪多発地区で、華の都パリが光ならモンフェルメイユは闇。
本作はこのモンフェルメイユに新たに着任してきた地方出身の新任警官ステファンが主人公。そこの犯罪対策部隊BACに加わり、地域の安全取締りに奔走するかと思われました。
BACの仲間クリスとグワダと共に行動しますが、正義の味方警察官とは思えぬ言動が目立つ2人(特にクリスはやばい奴)。
後にイッサという少年が引き起こすちょっとした出来事で、大きな事件に発展していくのですが、それまでに彼らBACの2人の自分勝手な横暴ばかりを見せられることで後の事件も単純に子供が悪いとは言えない様相になっていくわけです。
もはや子供は大人の背中を見て育つと言いますか、親だけでなくそのコミュニティにいる大多数の大人がモデルロールとなって成長していくのです。
ラスト30分の一大騒動は映画としてとても見応えがあり、言い方は悪いですがとても面白いです。だけども、ラストシーンのエンドロールに至るまでの演出がとても考えさせられる仕組みになっています。
日本でも治安の悪い場所というのはあれど、だからと言って警官が我が物顔で自分勝手に取締りをしていいわけではありません。この作品ではそんな横暴な警官たちにひと泡吹かせるところもありますが、だからといって「ざまぁみろ」とスッキリするものではありません。
とにかく日頃から人に接するときは子供にも影響を及ぼしうることを教訓として考えて行動しなければならないなと感じました。
ちなみに本作鑑賞前に『レ・ミゼラブル(2012)』を鑑賞しましたが、物語の舞台でもあることで小ネタが出てきました。やっぱそういうのがわかると気持ちがいいものですね。
※2020年劇場鑑賞53本目