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レ・ミゼラブルのserinaのネタバレレビュー・内容・結末

レ・ミゼラブル(2019年製作の映画)
3.8

このレビューはネタバレを含みます

初のラリジ監督。

スパイクリーが絶賛するものわかる。スパイクリーと似て、とにかく社会問題を強く人々の心と記憶に刻み込ませにくる構成。そして、エンドロールで、思考回路をバッチバチさせてくる。ちょいちょい意味不明だったり、笑えるシーンがありつつも、製作陣の伝えたいメッセージは視聴者にしっかりと届くような話。

鑑賞後、いやーな白人警察を演じている俳優が脚本に携わっていることを知って、この映画を見る目が一段と変わった。


(以下ネタバレ含む)
「悪い草も悪い人間もない。全ては育てるものが悪いんだ。」
で、締めくくられる今作。

ユーゴー作レミゼラブルで出てくる主人公の少年ジャンバルジャンは、パンを盗むが、ラリジの描くレミゼラブルでは、まさかのライオンの赤ちゃんを盗むっていう展開。

アフリカ系、ムスリム、白人系、そしておまけにラテン系。今の日本では見られないほどカオス。互いが互いのアイデンティティを守ろうと睨み合い、背中に回した手には、銃が握られていて、いつでもその引き金が引けるような体勢であること。貧困で片付けられる話ではない。長い歴史や信仰が絡んだ人対人の争い。混ぜるな危険の液体が蓋の開いた状態で不安定な場所に隣り合わせで置かれているような状態。大人だけならよかった。でも、歴史や違いを何も知らない無垢な子どもが関わってしまった。

大人がひとりでも子どもの言葉に耳を傾けていれば。大人が子どもたちに自分たちの掟のようなものを教えていれば。

信仰や歴史的背景から、自分と異なる人間を受け入れたり、好きになることは難しいかもしれない。だからこそ、妥協案として縄張りを決め、壁を作る。これは、残念だけど妥当で自然な流れなのかもしれない。ただ、罵り合っても負の連鎖であることは間違えないし、この壁を壊して歩み寄ることも不可能ではないんじゃないかなとは思う。

フランスのコロナウイルス19の感染拡大具合を考えると、この映画で出てくるような生活環境が当たり前であれば、ウイルスは蔓延してしまうだろうなとは思った。移民の問題も考えさせられる。
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