アラシサン弐

家族を想うときのアラシサン弐のレビュー・感想・評価

家族を想うとき(2019年製作の映画)
4.2
現実の社会問題下で生きる「持たざるもの」への虐げ方に一切の容赦を感じない。
是枝監督が師匠と仰ぐ理由が何となく分かる。

運良く人並みの生活が送れている人達には全く刺さらないのだろうけど、一度でも登場人物と似たような経験をしたことがある人は、かなり閲覧注意な内容だと思う(精神衛生的に)。

休みくれって言ってるのに、全然関係ない自分の仕事出来るエピソード話してくる上司とかブラック企業あるある過ぎて嫌になる。

この物語の出来事は、なにもイギリスの労働階級の家族だけが直面することではなくて、誰にでも起きるかもしれない普遍的な恐ろしさがある。

監督は「お金がなくても家族がいれば幸せ」というような幻想をジワジワ削ってくる。
お金がなければ働く時間が増え、根本的に家族の時間が減る。
職場の車に娘を乗せてドヤサれ、息子は親のようになりたくないと反抗し、妻との関係もギクシャクする。
歪んだ社会構造の中で起きてしまう負のループの前では「お金=幸せではない」なんて簡単に定義してはいけないと説かれてるみたいだ。

父は劣悪な職場に抑圧されているけど、同時に家庭では自身も息子を押さえつけてしまっているのが、なんとも皮肉でやるせない気持ちになる。
アラシサン弐

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