たく

家族を想うときのたくのレビュー・感想・評価

家族を想うとき(2019年製作の映画)
3.8
借金苦からフランチャイズの運送業を始めた元建築家のリッキーが踏んだり蹴ったりの末に家族が崩壊していく話で、ケン・ローチならではの労働者層の貧困問題が重くのしかかった。

運送会社が彼を個人事業主として何の保障もせず全て本人に責任を押し付ける一方で、個人の裁量を一切認めず1日14時間、週6日働かせるえげつなさ。
介護士として働く奥さんのビリーがまたいいようにコキ使われてるけど、クライアントを自分の親のように扱ってるだけに放って置けないんだよね。
これに反抗期の息子の愚かな行動が重なって状況を悪化させ、唯一聡明な娘も不眠症になっていくという見ちゃおれない展開が辛い。働けば働くほど借金を重ねていくというね。

病院のシーンでビリーが全編で唯一スカッとする行動を取るも、なんとも救いようのない感じでこんな暗い映画はひさびさに観た気がする。
家族団欒の途中でビリーが仕事で緊急呼び出しを食らい、セブの機転で家族皆で車中を楽しみつつ現場に向かうシーンが全編唯一のオアシス。

前半はBGMが一切なく、後半のセブが取るある行動から少しずつ音を入れてくるのと、ラストで配達不在票の決まり文句である原題”Sorry We Missed You”が出てくるのが上手かった。
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