ゆういち

家族を想うときのゆういちのレビュー・感想・評価

家族を想うとき(2019年製作の映画)
4.1
『俺たちどうした?』
『君には最高のものがある。家族だ』

貧困層、社会にメスを入れるケンローチ監督が引退を撤回してまで撮りたかった作品。
毎回ケンローチ監督が見せてくれる現実の厳しいこと、、、。
ひと言で言うと『真面目な人が苦しむ話』
ケンローチ監督についてまず調べてびっくりしたのは作品に登場するキャストの選び方。
労働者を描くには労働者としての苦労をした経験がないと観客に見透かされるとも言っていて、出身地までもこだわるとのこと。
今作もキャストたちは俳優業がメインでなかったニューカッスルの方ばかり。
凄すぎる。

さて、
父リッキーはフランチャイズの宅配ドライバーとして働き始め、妻アビーは介護福祉士として働いている。
リッキーの夢は借金を返し生活を立て直し、マイホームを手にして幸せに暮らすこと。
リッキーの挑戦となったフランチャイズの独立宅配ドライバー。
職場の現実は厳しく、体調を崩そうが穴をあければ罰金。
家庭に問題があろうが働けなければ罰金。
働けど働けど金を失い家族が壊れていく悪循環。
ん〜辛すぎる。
前作のわたしはダニエルブレイクでは怪我をした高齢の職人が複雑な社会復帰への支援システムに苦しめられる姿が描かれていたし、
今作でも社会からはじきだされた労働者が苦しむ姿が生々しく描かれている。
一見自由に見えた働き口も真面目に懸命に働いても搾取する側とされる側に分かれる現代の社会のシステム。
これは日本でも他人事ではないと思う。
リアル趣向な作品だけに最後まで本当に地獄のような展開が続く。
きっとこの家族はみんな大切に想い合っている、作中の警官の胸を打つ言葉もきっとその通りなのだと思う。
ただ子供たちの願いと親の願いは違う。
家族が家族を想うだけの時間をもっと持つべきだと思った。
途中から祈るように観たこの作品も、あなたにもどうなるかわかるでしょと言わんばかりの終わり方に打ちのめされた。
原題はsorry we miss you
本来は不在票の定型文だけど観終わった後に見るこのタイトルに涙が出る。
ゆういち

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