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マティアス&マキシムのFumiのレビュー・感想・評価

マティアス&マキシム(2019年製作の映画)
4.3
これなぜ観ていなかったのだろう。

ドラン作品は、すごく刺さるものと良くも悪くも不快感しか残らないものとあるが、これは自分的には前者だった。久々にこんな恋愛映画みた。

一瞬のあの通じ合った瞬間があれば、この先傷ついても傷つけてもいいとさえ思える人。カメラの前のキスで自分の気持ちに気がついてしまった2人の不器用な仕草が痛々しくも美しくみえた。

グザヴィエ・ドランほど、家や地元など狭くて不健全なコミュニティ中での鬱屈した会話劇を撮る天才がいるだろうか。
むしろ不快感さえ感じる数々の会話はかえって愛に満ちているようにさえ思う。

心情を的確に捉えたカメラワークや、独特な間にドランの作家性が溢れていた。

グザヴィエドランはきっと物凄く優しい人なのだと思う。
母親やその周辺の人間関係は明らかに不健全なのにそれすらも引き受けて生きていくという気概さえ感じる。

ドラン自身が顔に痣を作った理由を「彼がいかに友人達とリラックスして過ごしているか」を強く表したかったと言っていた。「あれだけ目立つ痣があっても誰も何も触れないぐらい当たり前になっていることだ」と。その思考をすること自体に好感を持てた。彼自身も辛い時に友人達に救われたのだという。とても好きだな。
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