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マティアス&マキシムのEDDIEのレビュー・感想・評価

マティアス&マキシム(2019年製作の映画)
4.7
変化しない友情と変化する恋慕。グザビエ・ドラン監督だからこそ表現できる繊細な感情の揺れが映像や演者の表情から伝わってくる。幼馴染という障壁が生み出す親友同士の鬩ぎ合い。時間的制約が結末に向けて2人の想いを最高潮に高める。

余韻が抜けません…。

グザビエ・ドラン監督作品。私はまだ『トム・アット・ザ・ファーム』『Mummy/マミー』『ジョン・F・ドノヴァンの死と生』ぐらいしか観たことなく、まだドラン沼にハマるほどの作品には出会えていませんでした。ただ本作は違いました。
大前提として私はゲイではないし、同性愛の気持ちは完全には理解できていないと思います。ですが、本作は主役の2人が幼馴染という設定なんですよね。
これって男女問わずとも、お互いが恋心を抱いてしまったら、そこに蓋をするってのはありがちだと思います。特に2人だけでなく、他にも仲良しメンバーがいる場合、2人が想い合っていることを表明したら、友情にヒビが入り、これまでの関係性が壊れてしまうってことをどうしても考えてしまうんですよね。

さらにそれを表す感情の機微を、ドラン監督はすべて語らずとも映像で魅せてくるんです。マットことマティアス(ガブリエル・ダルメイダ・フレイタス)とマックスことマキシム(グザビエ・ドラン)ら、それぞれの表情から目が離せません。ドラン監督作品は大きなアクションなどなくとも、感情が揺れ動く様子を役者の表情や演出ですべて物語ってくるので、一瞬たりともスクリーンから目が離せないんです。だからこそ劇場鑑賞向きの作品なんですよね。
少しでも見逃すとクライマックスまでの間に疑問が湧いて解消せぬまま終わるなんてこともあるはず。本作はまさにそんな映画でした。

2人に限らず、他の親友たちリヴェット(ピア=リュック・ファンク)やフランク(サミュエル・ゴティエ)、シャリフ(アディブ・アルクハリデイ)たちも誰一人として欠けたら本作は成り立ちません。また、マットの母フランシーヌ(ミシュリーヌ・バーナード)もかなりいい役回りを与えられますし、マットの婚約者サラ(マリリン・キャストンゲ)に至っては主役2人を引き立てる上で、陰のMVPをあげたいぐらいでした。

パーティー会場でのマットの振る舞い。大人気なく見えますが、本作を追いかけている鑑賞者である私たちは彼の想いが透けて見える分、その苦しさを共有できます。彼が自分の想いに蓋をし、抗うことを観て、とてつもなく胸が張り裂けそうな気持ちになるんですよね。
一方のマックスはオーストラリアへ旅立つ準備の最中、その時間的制約の中で彼自身に芽生えた感情と向き合おうとしていました。ですが、マットの素直になれない想いとすれ違ってしまい、結局のところマックスまで心に蓋をしてしまうんですね。

彼らの変わらない日常を変えられないもどかしさを強く感じることで、この作品を私は冷静に観ることができませんでした。
クライマックスに近づくにつれて、作中の伏線が活かされ感情もピークに達します。

新たな旅立ちという裏テーマも内包しているだけあり、転職間近の私としてはマックスの方にとても感情移入してしまいました。あと友人のフランクが雰囲気あるしいい奴すぎて、こんな友達欲しい!って思っちゃったほどです。

また本筋に関係ないですが、序盤にリンプビズキットの“My Way”という私の大好きな曲が背景で流れていたのでテンション爆上がりでした。

※2020年劇場鑑賞120本目
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