オオハラメグ

マティアス&マキシムのオオハラメグのレビュー・感想・評価

マティアス&マキシム(2019年製作の映画)
3.5
ドラン、もっと達観した人じゃなかったっけ??という感じ。
ドランの作品を観ているときにいつも思っていた、休む暇なく波の様に様々な感情が押し寄せ続ける感覚が今作ではほぼ無かった。今はそれに少し面食らっている。

最後に観たドランの作品がジョン・F・ドノヴァンだっただけに、今回は登場人物達の言動の素直じゃない子供っぽさが割と目についた。とはいえそれがBLの純愛にある独特な空気感をはっきりと感じさせてきたのは間違いないと思う。
ただ私がドランに関して入れ込んでいたところに"関係性の美しさ"があって、今作の2人の関係性に関して、他の作品程の彩度が感じられなかったのが少し残念だった。

日本で割と派手にプロモーションされてた割にストーリーは大衆的でないし、かと言って個人的には鮮やかな情感に満ちている様な感じではなかった。ドランが描きたかったものはなんとなく分かるけれど少し浅い気がする。

撮影や音楽、会話劇(特に最早十八番と化した喧嘩のシーン)には相変わらずのセンスは感じたので、それなりには好きだったけれど、ドランの作品にしてはしっくりこなかった気がした。

登場人物やその周りの環境における様々な二項対立によって2人の感情を描写する狙い方や、マックスとマットの両方異なるベクトルを向いた人間臭さは観ていて面白いなとは感じたけれど、個人的にその2人のハイコンテクストな交流に関して、他のドランの映画における"何とも言えないことの美学"を感じづらかったのかも知れない。

ドラン大好きだから本当に否定はしたく無いけれど彼はもっとやれる人だと思っていた、、
途中サブリミナルの様に映り込んでた犬がかわいかったし、ドランの秋の描写もまた素敵ではあった。前半の仲間達と過ごす休日のシーンは凄く愛おしく感じられて、あんな肩の力抜いてその場を楽しめる友人達と20代を過ごしたいなと思った。
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