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7月の物語のcyphのレビュー・感想・評価

7月の物語(2017年製作の映画)
4.2
2部構成の短編集 どちらもロメール感あってかなりよかった(ホンサンス通ってないけどホンサンス感でもあるらしい、確かに男のキモさの際立つロメールではあった) やさしい人が劇映画然としようといういきりがやや上滑りしてる気がしないでもなかったのに対し、撮影期間もごく短く役者は全員国立高等演技学校の生徒たちとスモールにならざるを得ない縛りの中で生まれた本作は粗さより軽やかさや溌剌さが前面に出ててとても好ましかった 特に第一部のリュシーは比較的めんどくさくない緑の光線のデルフィーヌといった風情でグッド 連れの女ともだちだけがナンパされて友だちもやぶさかでない風で自分だけが蔑ろにされてる気分になるやつも緑の光線とぴたり一緒だけどちゃんと嫌なことを嫌って伝えられてデルフィーヌよりもちゃんとしてた・現代的な女の子の在り方というかんじでいい 傘持ってくるディティールもいい

第一部も第二部も性欲を隠そうとしない(というか性欲をキラキラしたもので覆い隠し差し出す技量に欠けた)残念な男たちのアプローチが物語を動かしていくのではらはらさせられつつも、女たちも全く被害者然としていられるほど愚かしさを捨て切れていなく、これがわたしの夏の/パリの思い出かあという諦観の中にある吹っ切れ笑いor吹っ切れ泣きで締められるのもいい みんなのヴァカンスもそうだけど恋愛下手の暴走自転車をうまいこと・吊し上げ裁判以外の方法で群像劇の一部として着地させるのが上手

第二部ラストの報道パートはすこしびっくりしたけど彼女のどうしようもなさとマッチしていていい て思ったら撮影前夜にちょうどあの事件が起きたから組込ませざるを得なくなったんだ あの夜のシーンのどこか全員気がそぞろなかんじはそういう背景からも醸されてたものなのか フィクションが現実の上にしか立てないということを物語の両面から示されるエンディング
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