まぬままおま

7月の物語のまぬままおまのレビュー・感想・評価

7月の物語(2017年製作の映画)
4.0
ギョーム・ブラック監督作品。

第一部「日曜日の友だち」、第二部「ハンネと革命記念日」の二部からなる物語。以下、各部ごとにレビューする。

「日曜日の友だち」
ミレナとリュシーは友だち同士。ある日パリ郊外セルジー=ポントワーズのレジャーセンターに遊びに行き、そこで一人の男ジャンに出会うが…。

よくある恋愛物語ではあるが、ナンパ男に乗り気なリュシーの恋愛はあっけなく終わり、物語からはじき出されたミレナとフェンシングをする男性の友情が芽生えるのは面白い。リュシーはナンパ男の恋人と柔道という名の取っ組み合いをしたり、逆にジャンを湖に突き落としたり散々痛い目をみる。だけど二人がレジャーセンターの暗い道を何の気もなしに帰っていくのをみると、ミレナとリュシーの間にも確かな友情が築かれたと思うのである。

「ハンネと革命記念日」
最初のシーンから面白い。ハンネの部屋で眠る男友達。ハンネでシコろうとするが、彼女は突然起きて、追い出されて…。ハンネがいつ起きるのだろうかという緊張が、突然の目覚めで緩むとき、そしてそれがとても無様であると笑いが生じるのだととても思う。
ハンネは帰国最終日に革命記念日で盛り上がるパリを歩いていると、男からナンパをされる。上述の朝の出来事があったから、デートの誘いを受けるが、彼がハンネの住む寮につくと男友達がそれになぜか怒り、喧嘩になって、男は鼻血を出す。またもや出来事の失敗だ。だけどナンパした男も男友達同様、純粋な恋心ではなく下心でしかなく、そんな人間性が失敗によって暴かれてしまう。
ただしハンネは可哀想なお姫様ではない。寮生が好意を寄せる男性と情熱的にダンスをしたりと少し「ダメ」な部分があるのだ。
恋愛の王道物語が失われた昨今。本作のように男が女の部屋にいけば、自然と愛が芽生え、セックスが行われるわけではない。ナンパをしてくる男はプリンスでもなければ運命の人でもない。恋愛感情を抜きに異性とダンスを踊ることは「普通」である。それは革命が果たされた恋愛なのかもしれない。私たちはとても「自由」に恋愛ができる。けれどそんな革命はどうでもいいと思ってしまう自分がいる。再連鎖された恋愛を。革命を風景と捉え関心がないハンネの物語が、再び革命を逆照射する。