蛇らい

エターナルズの蛇らいのレビュー・感想・評価

エターナルズ(2021年製作の映画)
3.2
フェーズ4に入ってから特に、アベレージさえ抑えていれば良いという保守的な風潮(実際に成功しているが)のMCU作品群に、クロエ・ジャオという異物がどう作用するのかと言う点で、注目が集まっていた。

本作は全キャリアを通してのクロエ・ジャオのミューズである撮影監督、ジョシュア・ジェームズ・リチャーズが離脱し、『キャプテン・マーベル』、『ドクター・ストレンジ』『アベンジャーズ エイジ・オブ・ウルトロン』などを撮影したMCU組の古参である、ベン・デイビスが撮影監督を努めた。

アクション以外のシーンでは、クロエ・ジャオの持ち味でもある、緩やかに時間を使うテンポ感と、雄大な自然の中に人物を溶け込ませるオーガニックなテクスチャーが生きていて、MCU作品らしからぬ上品さが、神話性のある題材と上手くマッチしていたと思う。

アクションシーンも何の文句もなく、これまで通りの及第点には達しているが、本作でクロエがアクションを撮れる監督だったという評価をするのは時期尚早だ。過去にも何度も指摘しているが、MCUの制作体制は、監督がアクションを撮れない監督だったとしてもある程度のクオリティを維持できるアクション班が存在するので、いくらアクションが素晴らしかったからといって、必ずしも監督による仕事の出来とは限らない。そういう意味では、クロエが殺されたとも言えるし、彼女である必然性が薄まる。

キャラクターの人物像の振り分け、見せ場をセリフや構成でしっかりとまとめたられたのは、クロエ・ジャオの手腕に他ならないとは感じた。

キャスティングで言うと、地球上にに散らばったディヴィアンツを地球人に上手く溶け込みながら戦わなくてはいけないため、多様な人種がキャスティングされたのは理解できる。

セクシュアリティに関しては地球人との過度な接触をし、正体がバレるリスクがあるにも関わらず、セレスティアルズがエターナルズにセクシュアリティを与えた意図がわからなかった。そのリスクよりもエターナルズたち自身の存在に彼女らが疑問を持つことを恐れてセクシャリティを与えたのかもしれないが。性的にマイノリティなヒーローを登場させる意義(特にMCUであること)は理解できるが、地球人ではないこと、ヒーローとも一線を画す彼らの特異な境遇で、マイノリティ描写はクリアできていて、彼らが躍動することのみで良かったとも思う。彼らの出生の設定上、完全にボーダーレスなセクシャリティや性愛表現ができたのではないかとも思う。

クロエ・ジャオのキャリアを将来、回想したときに本作が持っていた彼女の本質や、潜在的な才能が新たに再発見できる楽しみを残しつつ今後に期待したい。
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