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一等女房と三等亭主のotomisanのレビュー・感想・評価

一等女房と三等亭主(1953年製作の映画)
3.7
 轟と伊藤、なるほどの一等、三等ぶりだがこれをアハハで済ましては置くまじというのがこの映画。収入10倍、知名度何万倍な細君に頭が上がらないのはそりゃあそうだろうが、伊藤の旦那は三等亭主でもなぜか社長の二号さんに慕われている。この二号さん身体は社長に売ってもこころは伊藤の旦那のものなんだそうだ。
 それに怒った轟細君はこの二号さんを新時代の女の風上に置けない堕落者と大軽蔑するが、その切り返しに却ってこころ打たれてしまう。二号さん曰く、いくら言い寄っても伊藤の旦那は一向に受け付けないでアンタにぞっこんなんだぞと。
 なにはどうあれ、これがターニングポイント。三等亭主は失地回復、愛は夫婦を救うなぁ。ただし、細君も自分の大看板を下ろすわけじゃあない。傍らの千恵子と桂樹も一等千恵子は桂樹を三等にしては置かないという。なんだか、三等男を一等女が尻を叩いてさあ一等目指して頑張んなと持ちゃげる未来が見えるようだ。
 これが、占領地日本が解消した翌々年、これからは晴れて「メイド イン ジャパン」が名乗れるんだから、しっかりしとくれよと言われているようだ。日本を占領地にしてしまい意気消沈の男どもを強くなった女がおだて上げるように感じたらくすぐったい限りだろう。
 そういえば、一等女房というと、この翌年には「うちの女房にゃ髭がある」が二十数年を経てリメイクされる。あれやこれやの末、亭主の外での活躍にも人望にも細君が見直し惚れ直すなんて話だが、二つ合わせて新時代を迎えた気分の一端を伝えるようである。
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