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プライベート・ライアンのtkykのレビュー・感想・評価

プライベート・ライアン(1998年製作の映画)
4.5
序盤のノルマンディー上陸作戦の地獄絵図だけでこの映画に圧倒されたし傑作だと感じた。映像だけで十分地獄だが、耳をつん裂くような銃弾の音がひっきりなしに鳴るので、観ているだけの自分もこの地獄の中にいるかのように感じた。これほど音響が映画にとって重要であると痛感したことは無いほどだった。
この場面は地獄絵図の強烈さだけでなく、戦争のリアルをまざまざと見せつけられているようだった。戦場に向かう直前に吐いたり、戦場で泣き叫ぶ兵士の姿は勇壮な兵士像とはあまりにもかけ離れており、戦争の残酷さを痛感するだけでなく、兵士のあまりに悲壮な姿は普段の兵士のマッチョさを皮肉っているようだった。それだけでなく、1秒先には頭を撃ち抜かれて死ぬ呆気なさに戦争の容赦なさを感じた。こういった戦争や戦場の兵士のリアルを見せつけられると戦争や国防を雄弁に語ることがいかにリアリティを欠いた危険な事であるかが分かる。
その後も緊迫感のある戦場のシーンが続くので息つく暇がなかった。その一方で兵士一人一人の背景も描かれるので戦場の兵士が生身の人間である事が感じられると共に、戦争が殺し合いであるということも痛感させられた。

今の世界情勢を鑑みると今こそ観られるべき作品なのかもしれない。日本に住んでいるとウクライナの状況は遠い世界のものと感じられるかもしれないが実際にこの映画以上の残酷な出来事が現実に起きていると思うと、改めて戦争反対を訴えないといけないと思った。
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