ぶみ

鉄道運転士の花束のぶみのレビュー・感想・評価

鉄道運転士の花束(2016年製作の映画)
3.0
ミロシュ・ラドヴィッチ監督、脚本、ラザル・リストフスキー主演によるセルビア、クロアチア製作のドラマ。
定年間近の鉄道運転士と、仕事の後を継ぐ養子の息子等の姿を追う。
そのタイトルから、心温まるヒューマンドラマを想像してしまうが、その実は鉄道運転士には避けて通れない鉄道事故をテーマとし、時にシュールに、時にブラックにと描くもの。
観ながらふと思い出したのは、数年前ツアー旅行に参加した際、名古屋から高山へ向かう途中の特急ワイドビューひだが、先行列車の人身事故(車内のアナウンスでは「触車」と言っていた)により稲沢辺りで足止めをくらい、午前中に高山に到着する予定が結局夕方となり、駅に着くなりトンボ帰りで帰路についたこと。
鉄道の人身事故が起きると、その原因や被害者がクローズアップされるが、その裏には事故を目の当たりにしている運転士がおり、その胸中やいかに。
本作では、そんな運転士特有の悲哀や、仕事を継ごうとする息子への愛情が繊細かつ大胆に描かれており、お仕事ムービーとしても面白いものとなっている。
鉄道好きの私としては、日本では見ることができない丸型のマスコンを操作するシーンがツボ。
唯一無二とも言えるテーマをエンタテイメントに落とし込み、不謹慎だなあと思いつつも、何気に優しげな空気感に癒される一作。

線路は幸せを運んでくる、ごくたまにね。
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