サラリーマン岡崎

朝が来るのサラリーマン岡崎のレビュー・感想・評価

朝が来る(2020年製作の映画)
3.9
河瀬監督作は意外にも初めて。
里親・若年妊娠などのテーマは普遍的なものではあるが、
やはりドキュメンタリー出身というところで、ところどころ見せるリアルな演出で不妊治療の辛さ・若年妊娠の社会課題などを訴えかける。
今回の不妊治療は夫の無精子性から来るもので、男側の辛さも描くし、
里親団体は両親のどちらかが仕事を辞め、家庭に入ることをルールとしていたり、
あとは、若年妊娠をした方や里親になった方へのインタビューがとてもリアル。
もちろん俳優が演じているものもあるが、本当に若年妊娠した方や里親の方も出演しているとのこと。
特に若年妊娠の中での風俗の問題はとても重みがある。

でも、やはりその中で物語の中心となるのは、母親にとっての子供の存在。
タイトルの『朝が来る』の「朝」とは、主人公たちの息子の「朝斗」のことである。
育ての親である栗原夫妻にとっては、朝斗が家庭に来てくれたこと、
産みの親であるひかりにとっては、探していた朝斗が見つかること。
上記で書いたように、全編で彼らの人生の辛さをリアルに描くため、
朝斗という存在はとてつもなく彼らの人生に光を注いでくれることが感じられる。

そして、そのテーマを主題歌を劇中内でも使用することで、
強調させるという手法も新鮮だ。
主人公の鼻歌だったり、ラジオやテレビで流れてきたりと
生活音として劇中で主題歌が流れる。
そして、最後にエンドロールでその主題歌が流れたときに、
主人公たちの気持ちがその歌詞に載せられている。
主題歌とは得てして映画のテーマを要約するように作られてはいるが、
全ての物語を経た後に、このように強調的に主題歌を意識すると、
主人公たちの気持ちが痛いほど感じることができる。
そして、最後の最後にはとてつもない仕掛けが…すごすぎる。。。