もこ

朝が来るのもこのレビュー・感想・評価

朝が来る(2020年製作の映画)
3.8
序盤の30分以内で3回泣いた。ババアはドキュメンタリーに弱い。逆に後半は全く泣かず、サスペンス的展開にハラハラし、少女の人生の流転に心を痛めていたら2時間経っていた。
心優しく稼ぎも常識もある、「親になる資格がある」栗原夫妻と、何も悪くはないが「親になれない」ひかり。ひかりのことを親になる資格がないとは言えないが、子供を切望する夫婦がいるなら、彼らに子供を譲渡した方がいい立場にある彼女。そんなひかりは周囲の残酷さに耐えきれず、しかし踏ん張って闘うことも出来ず、流されるように生きていく。
突然の中学生の妊娠、そりゃどうすればいいかわからない。母親の狼狽ようも分かるけど、だからってちょっと冷たすぎやしないか。でも本当にあり得そうな感じだからまた胸が痛い。
「なかったことにしないで」のメッセージは辛かった。ひかりはどんな思いでこの文を書き、消したのか……。家族によって出産した事実は文字通り「無かったこと」にされ、その後人生が拗れていくひかりが哀れでならない。
「印象的なのは、ひかりが「なんで私がこんな目に遭うの?」とチンピラに吠えた時に、何にも知らないチンピラが「さぁ?馬鹿だからじゃねぇの?」とめちゃくちゃ腹立つ返答をした時。あれを聞いた時、「何言ってんだひかりの苦労も知らないでヨォ!」という感情と「あー、まあそう言うわな」という身も蓋もない冷たすぎる感情が生まれた。私も世間体ばかり気にするくせに親戚には出産のことをベラベラ喋るという意味のわからんことをするひかりの母親(長い)のように、どこかでひかりのことを仕方ない子と軽んじていたのかもしれない。
タイトルの通り、ひかりのこの先は希望があると思っていいのだろうか。そうだと良いな。
もこ

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