どうか、光がさすように
私はこの映画を観て、これこそ現代日本に必要な作品だと深く思った。今回の”駄文”は、レビューというよりも今作を受けて綴るわたし個人によった感情文である。この映画の繊細さと奥深さを表すには、レビューという体ではとても収まらない。せめて、感情のアウトプットに尽くすのが作品に対する最大限の礼儀と受けとめてほしい。
皮切りは、子供に恵まれないため養子縁組に授かる夫婦。
ある日、2人の元へ貧相ななりをした女が「子供を返してほしい」と訪ねてくる。
しかし彼女は、その子の母親とは明らかに違う姿形の女性であった。
”彼女はいったい誰なのか?”その疑問が、この寄る方のない悲劇の封を切った。
繊細に映し出される感情と、それぞれの葛藤の投影が、まさに人間の厚みそのものである。行き場のない不安に身を挟まれ、自分のことのように苦しい、苦しい、とにかく苦しい。
私もこのシナリオほどではないものの、親に心のない言葉を吐かれたことがあるので自分のことのように感情が直結した。
私はこの映画を、「若くして子供を産んでしまった女の子の話」ではなく。現代の若者が受ける社会からの圧迫を表現した作品と捉えた。
2021年、若い世代は押し潰されつつある。コロナ自粛が増えたことでDVが増加し、若者の自殺率は全く翳りを見せない。育むべき思い出も潰されて、大人の都合に振り回され、感情を殺して生きている。彼らが幸せになれない世界などあってたまるものか。私の周りにも、ろくでもない親に苛まれて苦しんでいる人が残念なことに大勢いる。他人の心を許せない傲慢な畜生があぐらをかいて鎮座するこの社会で、子供・若い世代が幸せに生きていけるものか。
スコア4.7とつけたものの私の人生との照らし合わせにおいては5.0に及ぶ力がある。過去にみた若者の自殺のニュースが何度も脳裏をよぎった。彼らがどれだけ苦しい想いをしてきたか、お茶の間に流すだけではこれからの世の中生きてゆけまいぞ。