建野友保

朝が来るの建野友保のレビュー・感想・評価

朝が来る(2020年製作の映画)
4.7
栗原清和と佐都子の夫婦、佐都子と朝斗の親子、ベビーバトン代表の浅見静恵とそこに身を寄せる女性たち、そして望まない妊娠をした片倉ひかりと同じ境遇の女性たち…そこにあるのは、欠落していたパズルを埋め合うような、お互いを慈しみ合い、信頼し、受け入れる物語でした。どちらかといえば作家性が強い河瀬直美監督は今回、大衆性もキチンと取り入れて物語を描いています。そして養子縁組を両方の視点で掘り下げて描いています。そのバランスが絶妙だと思いました。「人から受容される喜び」を経験したことがある観客の心には、奥底までしみ入る名作。個人的な趣味ではありますが、片倉ひかりを演じた蒔田彩珠さん、浅見静恵を演じた浅田美代子さんには何か賞を取ってほしいです。
この映画のテーマは「受容」だと感じました。ベビーバトンで20歳のお祝いをしてもらうシーンが象徴的。くれぐれも、最後の最後の最後まで席を立たないで。「受容」の完結を見届けてほしいと思います。
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