ほのか

朝が来るのほのかのレビュー・感想・評価

朝が来る(2020年製作の映画)
4.2
自分の選択の結果で、タイミングの問題でもあったけれど、それでも、自業自得だ、しょうがないで折り合いがつけられることじゃない。
呑み込むしかないことだけれども、羨ましくて、妬ましいという気持ちまでは、ひとりでは呑み込みきれない。
そういうのが、とどのつまり"現実"なんかなと思う。理想と夢、甘い世界を捨てきれないながらもなんとか自分が立つその地に向き合い、生きていくしかない。



あ〜泣いた泣いた。
原作未読。今年は邦画に振られて(振って、ともいう)ばかりだったので、もう半ばやさぐれながら期待を裏切られてももうなんでもいい…という気持ちで席についたんやけど、つまらんと思う暇もなくこの世界にずっぷりと浸かってた。
「子供を返してほしい」しか情報を入れてなかったので、展開の巧さに舌を巻いた。織り混ぜ方が絶妙。たしかにこれはこの作品でとてもセンセーショナルな言葉なんやけど、大事なところは全くもってここじゃないのが本当に巧い。交差するきっかけにすぎない、し、交差する瞬間だけで人を判断することなかれをまた忘れてしまっていた私を叱る。


誰に気持ちを寄せてしまうか、で全く違う感想を抱きそうだなと思った。私は、自分でも予想外でしたが、ひかりちゃんに寄ってしまって、苦しくて苦しくてたまらんかった…。
嫌でも拒絶したくても無理やりでもなんでも消化して前に進まなきゃいけないこと、なかなか消化しきれずひとりいつまでも引きずって、それでまた人や自分と衝突する度に自分で新しい傷を作ってまた消化待ちの燻りをつくってしまうのみて、あ〜ってなってました。
自分の選択の結果だからなんで自分だけって口には出しにくいけど(借金のところでやっと口をついて出てて、そうだよね思ってしまうよ、そりゃって思った)、根底にはあることは誤魔化しきれなくて、それがどうしても拭いきれず、気持ちを引きずる一因になってる気がする。ひかりちゃんの気持ち、安易にわかるよって言えないけど、客観的に見たひかりちゃんを通して、普段電気柵でぐるぐる巻きにして自分自身にすらも触れさせない自分の心の内側にも少しだけ触れてしまったような、そんな感じ…


永作さんうンンンンンッま………表情がほんと…最高…心からの笑顔ではなくて、人を安心させるための笑顔がすごい…。言葉を浮かび上がらせたところ、同じタイミングでボロッボロ泣いてしまって、このいつのまにか映画の中に自分が溶けてしまっていた感覚が心地よすぎるんだよォ〜って思いました。
栗原夫妻、日本人の夫婦らしさが全くわざとらしくなくて素晴らしかった。無闇やたらにハグしたりキスしたり手を繋いだりするんじゃなくて、どうしたらいいかわからない時ほど、ただ隣にいる。身を寄せる時もあるし、手を握る時もあるけど、ただただ本当に隣にいるだけの時があって、それが薄情に感じないのが良かった。
どうでもいいが、井浦さんのリュック、前で留めとんのダサすぎん??





⚠️きもちねたばれ


ひかりちゃんに気持ちが触れ切ってしまってる!って気づいたのが、相対したとき、追い詰められたところで、ふたり、手を取るところから目を背けてしまったから。
現実は目を背ければ背けるほど迫ってくる。見たくないものほど手にいれたかったもので、人がそれを突きつけてくるのはそんな意図はなく、まったくの無意識で、だから余計に残酷だと思った。

無敵だと思ってた赤いネイルも黄色いジャンパーも一歩外に出ればただのボロボロのそれで。あんなの気づいてしまったらもうはやく消え去りたいって思ってしまう…。
画面上では誰も自死を選ばないのがまた現実らしいなあって思った。

あとあと、誕生日お祝いするシーン、めちゃくちゃに泣いた。言葉にすることは難しいんやけど、あの表情みたらもう無理だ。あれがピークだなんて、そんな人生にさせたくない…って思うだけは本当に簡単なんよなぁ…。