くまくま

カセットテープ・ダイアリーズのくまくまのレビュー・感想・評価

3.5
 サッチャリズム真っただ中だったであろう鬱屈とした80年代後半のイギリスが舞台。
SONYのウォークマンとカセットテープが心友のパキスタン移民の少年ジャベドが主役。
と同時に常に彼に寄り添い、新しい世界の扉を開けるカギになるブルース・スプリングスティーンの名曲も主役。
(スプリングスティーンの曲を知らなくても大丈夫だが、知っていた方がより楽しめるかな)

 移民、経済問題、家族問題、年代間の対立。
そして等身大の思春期の悩み。
どれも普遍的な悩みだが、それらと正面から向き合う主人公ジャベドの非常に好感が持てる。
そんな彼だからだろうか。
地域社会では人種的な偏見を持つ人たちもいるが、彼の支えになってくれる「良い人」が彼の周囲には必ずいてくれる。
学校の先生、隣に住む退役軍人の老人、幼なじみの父親…さり気なくメンター的な立場で彼を支えてくれる人達。
隣に立ち励ましてくれる幼なじみ、スプリングスティーンを教えてくた学校の友人、ガールフレンド。
くじけそうになった時もそういった支えもあって、また再度走り始めるジャベド。
そして再構築された家族ともの前向きな関係。

 目標に向かって悩み、立ち向かうことの大切さ。
劇中に2度流れる「Born to Run」が1回目と2回目で全く違う意味を持って聞こえてくる。
人が善き心を持っている可能性を信じたくなる。
とても爽やかで明るい気持ちになれる良作品。
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