あーや

Winnyのあーやのレビュー・感想・評価

Winny(2023年製作の映画)
2.0
日本のIT業界において極めて重大な意味を持つWinny事件を扱った物語。

Winnyに関連した一連の話において最も重要なことは何なのかと言えば、「IT技術を受容する土壌が、日本においては司法やメディアのみならず、"一般市民"というレベルですら令和の現代になってなお存在していない」ということ。

この事件の反動か、近年は「金子勇はヒーロー」「Winnyは世界を揺るがす一大発明」という言説が広まっており、この映画中でも警察の裏金事件という直接関係のない話を持ち出してまでそれを強化する方向で描かれているが、それはこの問題を扱う上で全く不適当な描写だと言わざるを得ない。。

映画の最後で在りし日の金子勇氏本人が語っているけど、誰が英雄で誰が悪人だという話ではない。
それよりも"""日本国民全員"""が日本の情報技術の未来を蝕む問題に真摯に向き合うことができているかどうかという点が大切なのであって、この映画はそこを適切に捉えられているとは思えない。

日本では金子氏の死を経てもなお、"アラートループ事件"だとか、IT業界の多重下請け構造だとか、ITの中等・高等教育の質がとか、文系が理系をこき使う組織がとか、エンジニアの低賃金長時間労働がとか、...優秀で真っ当なIT技術者が技術者らしく歩いていくことを阻む様々な課題があいも変わらず山積していて、まるでどれ一つとして解決の糸口が見えていないのは非常に残念。

最初期のコンピュータやインターネットの普及からして、日本では欧米的西海岸思想とはまた別の方向で(思想なき進歩と言ってもいい)進んできたわけだけど、もはやその時点で過ちを犯していたのだとすら思えてきてしまう。

個人的には、日本が東南アジアや東欧の新興国に情報技術の研究開発能力・受容で追い抜かれるのは20年はかからないだろうと読んでいるけれど、果たしてこの予想は外れてくれるだろうか。。。
あーや

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