カリン

恐怖人形のカリンのネタバレレビュー・内容・結末

恐怖人形(2019年製作の映画)
4.3

このレビューはネタバレを含みます

ずっと楽しみにしていたこの作品。やっと見ることができました。

あらすじ:女子大生の由梨の元に、怪しげな招待状が届く。そこには『パーティを開きます。参加して頂いた方には謝礼として10万円を差し上げます。』と書いてあった。
由梨は乗り気ではなかったが、幼馴染の真人は10万円に惹かれ参加することにする。真人を放っておけない由梨は、真人と共にパーティへと向かう。
集合場所に到着すると、同年代の男女5人と中年の男性が一人いた。楽しくパーティをしていたが、突如日本人形が現れる。その人形は少しずつ体が大きくなっていき、等身大の大きさに進化したとき、惨劇が幕を開ける・・・

【ここからネタバレ有りです!】
さて、先に評価を申しますと、期待を裏切らない出来で、大変満足でした。
13日の金曜日と悪魔のいけにえ、チャイルドプレイを融合させたような作風で、そこに調味料としてJホラーの要素も織り交ぜており、ゾッとする場面も多く見られました。
様々なホラー映画のオマージュ要素が強いのですが、オリジナリティにも溢れています。それはなんといっても等身大の日本人形でしょう。
日本人形というだけで不気味なのに、それが人よりも大きな姿で襲ってくるのですが、恐怖も倍増です。

そしてこの日本人形、不気味なんだけれど人間サイズの日本人形が襲ってくるというのは、絵面的に言えばどこか滑稽でもあります。
ここまでの大きさになると、ち○ちゃんのような印象も見受けられるんですよね。
一挙一動がきぐるみ感満載で、可愛らしいです。

そして、巨大化した当初は武器もナイフやフォーク、斧でしたが、最終的にはチェーンソーを持ち出してきます(笑)
ここまで来ると恐ろしさよりも滑稽さがどうしても目立ちますね。
ただ、それがいい味を出していて、どうしても嫌いになれない、謎の魅力に溢れているのです。

さて、ストーリーの展開もオーソドックスでありながら、工夫がされていました。
物語の序盤は本当に呪いの人形であるかのように写真の片隅に写っていたり、玄関に置いてあったりします。
これがなかなかゾッとするもので、思わずびっくりしてしまいました。
それが物語が進むにつれて、ちょっとずつ人形が大きくなっていく訳です。
怪しげなオカルト研究家までやってきて、呪いの人形について力説するわけですから、信憑性も増しますよね。
また、いかにも怪しいキャンプ場の管理人を登場していたりと、ミスリードを誘っていたのも好印象。
少女の呪いなのか、人的なものなのか…そう惑わせるストーリーをテンポ良く描いているんです。
「大きくなあれ、大きくなあれ」と少女が人形に願いを込めるシーンは、その象徴です。

そんな物語が大きく変わるのが、中盤から。スラッシャー映画では定番の、電話が繋がらなくなり、閉じ込められます。
クローズドサークルはミステリーでもホラー映画でも定番ですからね。
人形が巨大化してからは、ジェットコースターのように猛スピードでストーリーは進んでいきます。
一人ずつ、一人ずつ、人形はパーティの参加者を殺害しています。
ゆっくり走ってくる恐怖人形に、「早く殺してくれ!」と言わんばかりにこけたり、トラバサミに引っかかってどんどんと死んでいくのです。
個人的にはここからグッと面白くなってました。
剣道使いと人形の一騎打ちは特に心惹かれましたね。

また、一見何事もないようなシーンでも、後々の伏線になっていたりと、至る所に伏線を散りばめていました。
ただの虫除けスプレーかと思いきや、それを武器にして人形を撃退する等、小道具にも伏線を張っていたんですよね。
尺の短い映画なのに、これは凄いと思います。無駄を省いて必要な情報を入れていく監督の力量の高さが伺えます。

また若手の俳優さんが登場する作品は、演技に難のある印象が強かったのですが、今作はそういったこともありませんでした。
皆さん演技がお上手で、性格の悪いキャラクターは視聴者に嫌悪感を抱かせ、コミカルなキャラクターにも親近感を抱かせます。
正直、アイドルということで小坂菜緒さんの演技には一切期待していなかったのですが、上手かったです。棒読みではなく、登場人物になり切っていました。
あと当然ではありますが、めちゃくちゃ可愛かったです。さすが人気グループでセンターに選ばれることはありますね。
最高につまらなかった映画「としまえん」の俳優たちに爪の垢を煎じて飲ませたいくらいです。

そして忘れてはいけないのが萩原聖人です。さすが実力派俳優といったところで、この人が犯人だったわけですが、物語の序盤ではただの酔っ払いの中年を見事に演じていました。
しかし、その正体は10年前のサマーキャンプに訪れた8人によるいじめを苦にして精神を病み、亡くなった少女の父親だったんです。
父親として娘を失った悲しみを、全身を使って見事に表現していました。
そんな萩原聖人が、きぐるみを着て語るシーンはシュールです。

ここまで絶賛ではありますが、少し疑問点も残ります。
まず第一に、人形が拷問されているときに涙を流すシーン。
実際にはただの人形だったわけで、何故涙を流したのかさっぱり分かりません。まぁ些細な問題なのですが。
人形も縛られていたところから抜け出すのも、人的要因が原因なのであれば、どうやって逃げ出したのか、その方法が分かりません。

それから、唐突に挿入される百合シーン。スラッシャー映画には定番なんですが、唐突すぎて「この場面いる?」って感じられました。
お決まりだから・・・といえばそこまでですが、これはさすがに必要ないと思います。
あと、唐突に流される挿入歌。完全に場面に合ってないので、ちょっと失敗だったかなぁと。

そして、トラバサミに引っかかって死んだ女性が刃物で刺されるシーン。
ここ、刺さっている刃物と人形の持っている刃物が別物でした。
刺さっているのはナイフなのに、人形が持っていたのはフォークでした(勘違いかもしれませんが)

また、個人の感覚かもしれませんが、由梨の存在感がちょっと薄いかな、と。
こういったスラッシャー作品では極限の状況の中で、主人公の成長を描いていたり、トラウマを乗り越えるものになっていることが多いです。
そういったこともなく、見せ場も全然ないのでちょっと寂しい印象です。あと衣装がダサいです。

ということで、粗が目立つ部分もあり、好みがはっきりと分かれるとは思いますが、個人的には大満足でした。
好きなシーンはたくさんあるのですが、あえて挙げるとすれば「虫除けスプレーで人形撃退」でしょうか。マジで笑いました(ラストの爆発オチも捨てがたいですが)
スラッシャーB級映画が好きな方も、小坂菜緒さんが好きな方にも、おススメです!

小坂さんの出世作となる「恐怖人形」是非あなたもどうですか?
カリン

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