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夏、至るころのmaiのレビュー・感想・評価

夏、至るころ(2020年製作の映画)
3.6
期待はしていなかった…というか、少なからず地元補正はかかってしまうはずだから、楽しめないなんてことはないだろうなと思って鑑賞を決めた。結論から言えば、いたって普通の、既視感のある青春映画だった。でも、その中で確実にこの映画にしかない魅力はあったし、なにより悪役がいない、そして友情や夢にフォーカスしていたのが良かった。

初めは主人公目線で話が進んでいくから、幼馴染の男の子は凄く完璧な存在として映る。でも、映画が進むにつれて、彼は彼なりにその真面目で真っすぐな性格ゆえに苦しんいることが分かってくる。そこからが、友情・夢の詰められた青春映画の面白さが発揮されるところで、その面白さが既視感はありつつ丁寧に描かれ、「離れていても隣におる」と語る友情の爽やかさに繋がっていたと思う。
主人公は幼馴染の卒なくこなす真っすぐな姿勢に「自分はあいつみたいにはなれない、あいつは凄い」と思っているし、一方で幼馴染は主人公のことを「自分はあんなに真っすぐに人と向き合えないし、自由に振舞えない」と感じている。それは嫉妬でもあるけれど、どちらかと言えば相手へのリスペクトでもあって…もちろんぶつかってしまうのだけど、自分の感じている相手への感情がリスペクトからくるものだって分かっているからこそ、相手を否定したりすることのない爽やかな解決に繋がっているのだと思った。
正直、「池田エライザが原案・監督」という触れ込みがなければ注目はされず、地方のインディペンデンス映画のひとつ…くらいの位置づけだったと思うけど、それだとしても綺麗に纏められた佳作だと思った。
ただ、夫婦の絆や親子の関係性、さらに友情や夢…監督が描きたいことがたくさんあって、描きたいシーンもたくさんあって…それを詰め込みすぎているような気もした。その点だけが少し残念だけど、良い作品だったと思う。
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