針

ルクス・エテルナ 永遠の光の針のレビュー・感想・評価

4.1
ギャスパー・ノエは最新作の『ヴォルテックス』に続いて2作目の視聴。50分ぐらいの中編。

『ヴォル~』は画面分割自体がテーマの映画で、それと比べるとこっちはそれほどではないんだけど、ところどころ左右に分割されてるシーンがあって、先にこちらで使用(試用?)してたのねと思いました。他の映画でも使ってるのかもしれない。
画面サイズも、中央にちょい横長の画面を置いてるシーン、正方形に近い画面を左右にふたつ並べて分割してるシーン、横長のシネマスコープ?に変わってるシーンとかいろいろあった気がします。ウェス・アンダーソンも画面サイズにすごいこだわる方っぽいですが、あちらが歴史性とか美学的な側面が大きい気がするのと比べると、こちらはひとえに映像的な効果のためっていう気がする、けど実際は分からない。

内容は、映画の撮影自体を題材にしたメタ映画っぽいもの。魔女狩りの火あぶりの刑の撮影現場がさまざまなトラブルに見舞われていく様子を、やや群像劇風に語っていくという感じ。
ストーリーは一応分かるんだけど、それによって何を表現せんとしているのかは難しかった……。冒頭にてんかんに関するドストエフスキーの言葉が引用されたあと、あいまあいまにTh・ドライヤーとかJ・L・ゴダールとかR・W・ファスビンダーとか(で合ってるよね?)の映画についての言辞が挿入されていく、わりと衒学的かつハッタリめいた感触のなかで、撮影現場の混乱がだんだん加速していきます。

個人的には、映画という映像芸術における「奇跡」に対して、半分盛大に嘲笑しつつ、もう半分では敬虔な祈りを捧げるみたいなかなりぶっ飛んだ映画なのではないかと思いました……。
なにはともあれ、映像的には今まで観たことないものを観させてもらったなーという感じがすごくて、けっこう恍惚となりました。その一点だけでもかなり面白くて自分は観てよかったと思います。

それと自分はよく知らないけど、主演のシャルロット・ゲンズブールとベアトリス・ダルのふたりは名前そのままで自分自身役として出演していて、ここにも何かメタ的なもくろみがあるんだろうなと思ったり。

ラストについてはコメントに。合ってるのかは分かりませんが……。
ギャスパー・ノエは他のも観てみます。
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