世阿弥と人気を二分したとされる能楽師犬王に焦点を当て、友である盲目の琵琶法師との友情を基軸に、その生涯が語られる映画。
歴史上語られなかった史実をファンタジーを含めて描いている作品。
湯浅監督の天才的であり鬼才とも呼べる画面の圧に異世界旅行をさせて貰っている感覚に陥る。
鬼才過ぎて後半観客を置いてけぼりにしている部分もあり、そこは好みが分かれるところ。
描きたいことは画面に全て注ぎ込んでるからパッションで感じ取れ！という感じ。全てを感じ取るのは難しい。
脚本は野木亜紀子さんということで、こちらも天才。しかしこちらは言葉や情景を巧みに操る天才。
「パッションの鬼才」と「言葉の天才」が激突。戦った結果、パッションに圧倒されてしまったかと、画面から感じ取れる。
伏線やミステリアスな要素があるのは野木さんの手腕だが、それらを置いてけぼりにする後半のライブパートは、もうそういう映画だと頭を切り替えるしかなくなる。
良い意味で「天才たちの遊び」とも言える出来栄えに、我々は頑張ってついていくしかない。
声優も天才揃い。
犬王役のアヴちゃんはほんとに声優初挑戦かと思うほど、凄い。
琵琶法師役の森山未來が「7色の声」と表現しているのは、誇張でもなんでも無く、ほんとにその通りに感じる。
声の使い分け、聴き入ってしまう歌声の凄さ。どこを取っても素晴らしい。
森山未來も決して下手というわけでは無かったが見劣りしてしまう結果ではあった。
画面から言葉では無く、映像から何か、そこに込めた思いをパッションで感じ取る映画。
他には類をみない良作。
