どらどら

犬王のどらどらのレビュー・感想・評価

犬王(2021年製作の映画)
4.7
- ここから始まるんだ俺たちは!

奪われしもの
阻害されしもの
どこにも居場所のないもの

彼らの武器はいつの時代も変わらない
音楽、舞い、そして生き様
彼らは自分の運命の過酷さを嘲笑うかのように駆け抜ける
熱狂の先に何かがあると信じて、走り続ける

「俺たちはここにある」
それを誰かが知ってくれる
それだけで、十分なのだ

今度は私たちが、彼らの魂の語り部たらねばならぬ
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古川日出男×湯浅政明×野木亜紀子×大友良英
アヴちゃん×森山未來
各種の才能がその才能のまま、ある「異形」のものたちの狂騒を映画として蘇らせる
その試みの現代的意義、そしてこれに救われる人間が間違いなくいる、というそれだけでこれは傑作と言っていいのではないだろうか

「サブカルチャー」の矜持、世界に中指突き立てるパンクロック、全ての自由が体現されるフェスカルチャー、そう言ったものが時代を超えて表現されるだけで、それらに救われてきた人間としては胸が熱くなる

そして、容易に、とても容易に、それらは権力に叩き潰されるという残酷さ
しかし彼らの魂はあり続け、世界に中指を突き立て続ける
「曲」は残らなくとも、彼らはそこにあり続けるのだ。

物語的唐突さ、彼らの心情描写の希薄さは問題ではない。我々はあくまで彼らを大衆的に消費する有象無象の観客なのである。その非対称性をもこの映画は撃っているのだ。あれだけ熱狂していた観客も、権力に封じられればそれに乗っかる。彼らの見えている部分しか私たちは見られない。それは歴史にしても然り。それでも、私たちは語り継がねばならないのだ。

女王蜂リスナーとしては、映画界の大音響でアヴちゃんの歌唱を聴けるというそれだけで至福なのだが、犬王という「異形」をアヴちゃんに(声だけとは言え)背負わせることにある種の卑怯さを感じなくもない
(もちろん「異形」が自身は自身のままにネガティブな意味を自ら取り払っていくという構造が物語の肝である以上、この指摘は当たらないのかもしれない。アヴちゃんの行っている活動がこの作品中の犬王とリンクするのもその通り。でも、「この犬王はアヴちゃんしかできない」というときに僕は何かモヤモヤを感じる。)
まあとにかく女王蜂これで知った人はぜひ「犬姫」からでも聴いてみてくださいな

谷一がイケメンすぎて泣ける
平家物語のアニメからもやはり繋がっている構造になっていて、一連の作品の流れは完璧だな、と改めて感じた
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