ブラックユーモアホフマン

犬王のブラックユーモアホフマンのレビュー・感想・評価

犬王(2021年製作の映画)
3.8
序盤はワクワクしたんだけど。

忌まわしき呪いと、盲目になった少年と、生まれ落とされた異形のモノ。そこに音楽が絡むのか、面白そうだぞと思ったのだけど。

歴史の教科書に書いてあることの隙間にあったかもしれない書いてない歴史、みたいな。都市伝説にも近いような。そういう話は面白くて好きだし、グロテスクさも歴史劇の風情の内だし。盲目の少年が師匠に弟子入りして、ってデアデビルみたいじゃんとか思ったり。

そして何より異形のモノ。人間の形で生まれず家族に犬扱いされているなんてエグめの設定に興奮してそのデザインもいいなと思っていた。
でも足を獲得した瞬間、冷めてしまった。結局フツーの姿になっちゃうんかい、と。じゃあコイツの個性なんやねん台無しやないかと。『美女と野獣』の野獣が人間の姿に戻ってガッカリみたいなことと同じで。
だからか、最後の場面は出会った頃の姿に戻ったけど。

さらに音楽がいかんせん好みじゃなかった。分かんないけど僕の琴線には触れない。端的に言ってダサいと感じてしまった。

湯浅監督、『夜明け告げるルーのうた』に「歌うたいのバラッド」使ったのとかもあんまり音楽のセンスが僕、合わないかもな。今回は大友良英なのか、分からないけど。

『マインド・ゲーム』でもそうだったけど、重要そうな場面を描くのに映像表現に頼りすぎダイジェスト的な演出にしてしまうことで、むしろ大事なことが雰囲気に流れていってしまうのが勿体ないというか。アニメーションだからこそだと思うのだけど。各キャラクターに、特に津田健二郎のキャラクターについて、そんなによく知れないまま、思い入れも持てないままクライマックスに突入するので感動もできない。これは明らかに脚本が弱いと思う。野木亜紀子のせいなのか分からないけど。

それとやはりダンスは、肉体表現だから、アニメーションと食い合わせがどうしても悪く見えた。実際の重量感がないと、感動できない。そりゃアニメなら描き方次第でどうにでもできちゃうじゃん、とどうしても思ってしまう。楽器の演奏もある種そうかもしれない。ダンスよりはまだ感じないけど。

けどけど言ってしまうのは期待した反面、ということかも。アヴちゃんは役には合ってたけど声優としてはまだ拙い感じが残る。それも少し気になった。

【一番好きなシーン】
犬王が犬と同じメシを食わされてたところ。