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犬王のonpaiのレビュー・感想・評価

犬王(2021年製作の映画)
1.0
この映画の見せ場である中盤以降、音楽はそれまでの琵琶と和太鼓の音色を中心とした「能」からひずんだギターとベース、ドラムで構成する「ロック」へと急な舵を切る。このロックの奏でる音は荒々しく重くて拍子が強く、当時の室町の人々には全く新しいものであった、、、という設定なのだろうが、現代に生きる我々からすると前半で奏でてくれてた琵琶と和太鼓のグルーブの方がよっぽど新鮮で鮮やかに映り、待ってましたと言わんばかりに登場したロックの音色は10代の頃から聴き馴染んだかつてのアーティスト達の少し劣化した模倣版であり、そこで日本語の歌詞を無理矢理乗せた結果、日本語でロックをどうやるかを模索してきた日本ロックの歴史の恩恵を踏まえない野暮さが少し出てしまった感がある。そして何よりも疑問に思うのがこれだけストレートになんの躊躇もなくゴリゴリのロックの音色を演奏している彼らの楽器はそれまで使っていた和楽器のみ。そこにはエフェクターもなければアンプもない、エレキギターを弾くかのような振る舞いで琵琶を弾く友魚、ロカビリーかよと思ってしまうウッドベースのようなでかい琵琶?そしてこれだけバストラムとスネア、ハットの音が鳴り響いてるのにリズム演奏者は和太鼓を叩いてるだけ。なんなのか理解が追いつかず音はイメージってことなんだろうかと様々な考察が頭をよぎるがどうやらこれは彼らが演奏してるらしく、設定の落とし所の無責任さに湯浅監督を軽蔑したくなる。見てるうちに疑問を持つことも面倒になり、譲歩して見ているとクイーンのようなロックオペラが始まり、バレリーナの如くボーカルは舞う、この時代背景にある能の美しさは一体どこへ行ってしまったのか。これを見た海外の人は果たして楽しいのだろうか。こんなピントのズレた映画がゴールデングローブ賞なんてとらなくてよかった。
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