にしや

生きるのにしやのレビュー・感想・評価

生きる(1952年製作の映画)
3.9
志村喬いい演技するな〜!

とよの言葉で目的を見つけ、「ハッピーバースデー」の歌が流れる中、階段を駆け降りていくシーン、演出上手すぎてゾワッときた。
とよ、奔放で明るくてキッパリした性格でご飯もパクパク食べるのが気持ちよかった。愛嬌がある人間は見ていて気持ちいい。渡辺の気持ちもわかる。

志村喬、口下手な人間がボソボソ喋るかんじがすごく上手かった。
痺れを切らしたとよが、「ねえ、もっとハッキリ言ってよぉ!そんな雨垂れみたいにぽつんぽつん言わないで!」ってはねつける台詞はめっちゃ笑った。

そこからの主人公の働きは第三者の回想で埋め合わせていく見せ方もよかった。
他人から見たら渡辺の人生は不幸にも幸せにも見える。誰が渡辺の真意を理解できるだろうか?人は自分が解釈したいように解釈する生き物だよなぁとしみじみ思った。

渡辺の意思に奮起したように見えた役所のみんなが、翌日になってみるといつも通りに仕事してるのも「人はそう簡単には変われない」という皮肉が効いてていい。

ラスト、子供たちが遊ぶ公園で〆る優しさがよかった。

「なぜ私がミイラになったかというと…それは、つまり…倅のためを思って…だが…倅は全然…そんなことは…すこしも…その…」
「その責任を息子さんに押し付けるのは無理よ。だってそうでしょ?息子さんがミイラになってくれって言ったんなら別だけど。親ってどこの家も似たようなものなのね。うちのお母さんも今のと似たような理屈を言うのよ。お前が生まれたために苦労したんだって。そりゃ生んでくれたことは感謝してるわ。だけど、生まれたのは赤ん坊の責任じゃぁないわよ」
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