あまのうずめ

生きるのあまのうずめのレビュー・感想・評価

生きる(1952年製作の映画)
4.0
市役所市民課課長の渡辺は流されるまま書類に判を押すだけの仕事をしている。地位を守るためには何もしない方が一番良いと思っていた。市には陳情の婦人会らがやって来るが全てたらい回しだ。無遅刻無欠勤の渡辺は仕事を休み病院に検査に行くと胃潰瘍だと言われるが、それは余命幾許も無いと同じ意味だった。


▶︎1952年の黒澤明監督作。「生きる LIVING」の鑑賞前に三度目の鑑賞。

胃癌と知ってからの絶望、行き場の無い無力感、放蕩した末にとよの活気に学び一つの仕事を成し遂げた渡辺を志村喬がこれでもかという位表情で見せつける。

息子夫婦とのすれ違い、役所の縄張りが一層悲壮感を際立たせ、葬儀のシーンで市の体制を暗に批判した黒澤と橋本忍の脚本が秀逸過ぎる。レントゲン写真のクローズショットから始まり結末を示唆した上での話の展開は後世にも受け継がれている手法となった。

帽子とウサギのおもちゃの効果的に使われ、志村の歌う「ゴンドラの唄」がストーリーに被り強く印象に残る。“生きること”の意味は様々でも一石を投じ、更に映画史に残る作品だった。

是非リマスター版なりで残して欲しい。