ゴン吉

生きるのゴン吉のレビュー・感想・評価

生きる(1952年製作の映画)
4.2
余命幾ばくもないことを知った公務員が残された時間を見つめ直すヒューマンドラマ。 
東宝創立20周年記念映画。 
巨匠・黒澤明が監督と脚本を務め、志村喬が主演、日守新一、田中春男、千秋実、小田切みきらが共演。 

市役所に長年務める市民課長の渡辺(志村喬)は30年間無欠勤の事なかれ主義の役人で、黙々と書類に印鑑を押したり、仕事を他の関連部署にまわすだけの無気力な日々を送っていた。ある日、渡辺は自分が胃がんで余命わずかであることを知る。渡辺は絶望に陥り、たまたま飲み屋で知り会った小説家に歓楽街を案内してもらいながら遊び歩くが、心は晴れない。そんな折、街中で部下の若い女子職員(小田切みき)と出くわし、一緒に食事をとってみると若い彼女の考えに惹かれるものを感じ、改めて自分を見つめ直すが…   

お役所の事なかれ主義や仕事のたらい回しを皮肉りながら、生きることについての意義を問いかけており、本作品は”黒澤ヒューマニズムの頂点”と高く評価されている。
昨年はオリバー・ハーマナス監督によってリメイク版「生きる LIVING」が公開され、アカデミー賞などの候補になるなど、本作は今日でも国際的に評価の高い作品。
これまで職場の陰でミイラと揶揄されていた課長が、短い余命をどう生きるのかが見どころです。
本作は課長の死で終わらずに、通夜に集まった元職場の役人たちの会話とその後の職場のシーンが意味深です。
主人公が雪の公演で”ゴンドラの唄”を口ずさみながらゆっくりとブランコをこぐシーンは感慨深く、最期は子供たちが元気にブランコをこぐシーンで幕を閉じる。
真の意味での生きることの難しさを描いた秀作です。

2024.1 NHKで鑑賞(BSプレミアム)  
第26回キネマ旬報ベスト・テンで1位(1952年) 
第4回ベルリン国際映画祭でベルリン市政府特別賞を受賞  
BBCの史上最高の外国語映画ベスト100で72位(2018年) 
ゴン吉

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