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生きるのmetalicheartのレビュー・感想・評価

生きる(1952年製作の映画)
4.5
子供の頃に少し見たが、大人になってからの本格的鑑賞。
70年前だろうと、名作は色褪せない。

自分の年齢から、主人公目線で見る事も出来るし、癌で家族を送った立場から、息子目線でも見れる。
また、突然上司や同僚を失った事から、同僚目線でも。
つまり、長く生きて仕事をしていれば、どんな角度から見ても、考えさせられてしまう作品。

当時はがん告知のない時代。
でも、本人は知ってしまう。
真面目一筋に、仕事はなあなあに生きてきた主人公が、最後の花道じゃないけど、夜の街で大人の遊びをして、若い子と仲良くなる。
まるでパパ活みたいに聞こえるが、若さとその生命が満ちたパワーに近づきたいって感じ。
そこで、この2人の生死の対比が見れる。
生の眩しさが、彼女から伝わる。
この物語の根幹にあたるのだから、
今の基準で評価はしないで欲しい。

そして、彼は何かをし始める。
昔も今も公務員のお仕事は、たらい回しの責任放棄。
彼もその歯車で30年生きてきたから、周りは不思議に思うが分からない。
目の前に時間の制限があると、何かを考え、行動に出る。

そして、生命が尽きた。
その葬儀から、ヒューマンドラマから、ミステリーに変わる。
何があり、何が起こったのかと。

自分ならどうする?
父の真実を知る息子。
仕事に尽力していた事を知る同僚。
それぞれの気持ちが交錯している中、主婦たちが葬儀に現れる場面は、悔しいけど幸せな気持ちになれた。
やっと自分の生きた証を残す事が出来たと。
こんな生き方出来たら、いいな。

志村喬は、三船敏郎の兄の様な父のようなスタンスが多かったが、これは彼の単独主演。
本当いい演技だし、この普遍的テーマは、どの世代にもどの国の人にも通ずる。
海外リメイクも当然。
リメイク版も見ないと。
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