Ryo

ソウルフル・ワールドのRyoのレビュー・感想・評価

ソウルフル・ワールド(2020年製作の映画)
4.5
生に死の価値はあるか?
人生は煌めきで溢れている

■テーマ
夢を叶えること≠人生を生きる意味
人生は生きるに値するか?

■哲学的な映画
監督はインタビューでプラトンやアリストテレスの本質主義やニーチェのニヒリズム、サルトルの実存主義など様々な哲学者たちの考えを表している。

プラトンはこの世で自分はこのために生まれてきたんだと思う瞬間がある。恋人や音楽、美しい景色など人それぞれ違うがずっとこれを探していた様な感覚になる。それは生まれる前に魂の世界でその煌めきを抱えて生まれてきたからであるという考えが哲学の中にはある。

アリストテレスは全てのものには目的がありそれを求めて生きていると唱えている。

そんな世界を作った今作はそんな哲学を否定していく展開である。だから22番は自分の煌めきがわからないまま人として生きることになったが生きていろんなことを経験していくうちに煌めきを見つけていく。


■自分の煌めきとは?
人は夢を持ちその煌めきを叶える為に努力する。そうすれば幸せになれると信じているから。

でも、夢というのは叶えた瞬間に消えてしまう。主人公は成功しても何も変わらなかった。成功や有名になる為に音楽をやってる訳ではなかった事を知りその後音楽を純粋に楽しんだ。音楽をやってる瞬間が好きでたまらなかった。夢を無理に追う事はプレッシャーになってしまう。
そして、好きな事をやってそして夢に向かって努力してた頃や何気ない一瞬がどれだけ幸せだったかは人生を振り返った時に初めて気づく。「一瞬一瞬を大切に生きる」

[夢がない人や夢を追う事にいっぱいいっぱいで周りが見えてない人に見てほしい。それは夢を無理に追う事は良くないと言ってるわけじゃなく、追う過程の小さな日常がいかに素晴らしいか気づくべきだと教えられるから。]

■原作と22番という名前の意味
原作は「キャッチ=22」
キャッチは落とし穴
22は軍規第22項「例えば狂気に陥ったものは自ら請願すれば除隊できる。しかし自分の狂気を意識できる程度ではまだ狂っているとは認められないものとする」

そこからアメリカではcatch 22はスラングで矛盾やジレンマという意味で使われている。

またプラトンはLの物語という本を書いている
Lが戦死して仮死状態になる。その後12日間でソウルの世界に行く。そこではくじ引きで勝った順番にどう言う生き方をしたいかを選べると言う物語。そこでは人間と動物の生まれ変わりも可能である。この映画の様に人は自分の煌めきを抱いてこの世に生まれてくるから人はそれぞれ綺麗な景色や恋に落ちた時に煌めきを感じるのであると言う考え方です。

■なぜジャズなのか?
ジャズ=即興の中に生まれる刹那的な美しさ
日常のいきなり現れる刹那的な美しさを表す為にジャズにしたのでしょう。

■魚の話

ある魚は言った
「僕はいつか海に行きたいんだ。」
するともう年寄りのの魚が
「君がいるのが海だよ」
魚は「海ってこれのこと?」
年寄り魚は「いや、これは水だ」

誰でもいつか人生が始まると思っている。夢ってのは得ることはできない、既に夢の中にいるから。人生はもう始まっていると言うことを比喩している。

■自分の煌めきを見失う人もいる
お金の為に仕方なくすきでもない仕事につくと自分の煌めきをいつか失ってしまう。
しかし人生の意味や目的を探す必要はない。人生の一瞬一瞬が煌めいていたことを自覚すれば生きている価値は充分にある。

■この映画が作られた経緯
監督であるピートドクター然り、ピクサーは自分のことを映画にしてきました。
インサイドヘッドは「思春期前の監督の娘が鬱病になり感情について勉強していくうちに着想を得た」
今作は「インサイドヘッドで成功を掴んだ監督は人生は何も変わらず目標を達成した今何の為に生きるのか?」というところからこの映画は作られている。

夢を成功し人生の目標を達成した後なにが残るか?それは今まで気づかなかった一瞬一瞬がいかに美しいか気づける事だ。
Ryo

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