はる

ソウルフル・ワールドのはるのレビュー・感想・評価

ソウルフル・ワールド(2020年製作の映画)
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「一途に夢を追う男が不慮の事故にあい、死後の世界で奮闘して生き返りを果たし夢をつかむ」そういった映画に最初は見えるのだが、軽くネタバレすると、この作品はそのようなものでは全くない。
そう思った方は、ぜひ今すぐにでも本作の視聴をしてほしい。

夢を追うことが人生を生きることではない。

憧れた職業につけなかった主人公は大きなチャンスを手にし「今、夢をつかめないなら今までの人生はまるで意味がない」「このために今まで生きてきたんだ」と断言する。
それはとても素晴らしく美しい事のように思えるが、その人生を本当に支えてきたのは衣装店を切り盛りする彼の母である。
夢を持つことがいけないのではない。
それでも、その夢によって耳をふさいでいては何も見えない。
夢は都合の良い耳せんではないことに、主人公は終盤でやっと気づく。
「意味なんてない」と切り捨てた過去でも、良いことはたくさんあった。美しくてみっともなくて、そんな騒がしい世界を彼は生きていた。
音楽は彼を救ったのかもしれないが、音楽は彼のためだけにあるのではない。そして音楽だけが世界ではない。

それこそ理髪店の店主の過去のように、新たな一面で世界は、彼の人生は煌めく。そんな簡単な、ごくありふれた一歩で。

素晴らしい作品でした。
CGアニメということで敬遠していたけど、もっと早く見るべきだった……
はる

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